花間集 訳注解説 (207)回目張泌 《巻四34 浣渓沙十首 其八》 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ8810

 207)回目張泌 《巻四34 浣渓沙十首 其八》

 

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●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"

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花間集 訳注解説 (207)回目張泌 《巻四34 浣渓沙十首 其八》 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ8810

(寵愛を受け続けている時も、不安な気持ちで過ごしていた、今もう何度も春を一人で過ごしていく寂しい妃嬪を詠う。)

花冠は髷からかたよってつけ、輝く白玉の簪が揺れ,よこになってねむり、そして、新たに起きあがり、思いをそっと小さな声で吟じる。翡翠や花鈿の飾、金の細い絲のかざり、寵愛を一手に受けていても、心配で眉をひそめ、気がかりな心のままである。

小さな檻のようなこの閨に、斜になった日のひかりがさし、風はショウショウと静かでもの寂しくふいている。妃嬪もこの春を過してまた歳を重ねた、簾越に庭の杏花も枯れ落ちてゆく。花の香りも、お香もすでに斷たれ、薄く明るい緑色に染まり、部屋の鍵は締まっていて、愁いは深くなるだけなのだ。

 

 

 

 

 

花間集 巻四

 

 

 

 

 

 2 仕事と生活

 宮人は六局、二十四司に分属して管理され、各職務に任命された。彼女たちは出身、容姿、技芸の才能などによって、それぞれに適した任務と職掌が与えられていた。上級の宮人は大半が近侍となり、皇帝、后妃の日常生活や飲食等の世話に従事した。その他に皇帝が朝政に当たる時は側に侍り、内廷から皇帝の勅命を伝える任務にも当った。唐末の哀帝の時代になって、こうした任務ははじめて廃止され、宮人は内廷の門を自由に出ることが禁じられた。その他の下層の宮人は宮中のこまごまとした各種の雑事を分担した。たとえば、ある種の宮人はもっぱら宮中の門を見張っていたので「戸婢」とよばれた。また裁縫、織布、刺繍など、女腎特有の仕事を専門にする宮人は、皇帝后妃などの衣服を調達したり、また軍服をつくる仕事も兼ねた。また宮中の掃除や、庭園、灯火、倉庫など一切の管理事務を受けもつ者もいた。

 労働と近侍の他に、宮人のもう一つの役割は皇帝を楽しませることであった。中宗は宮女たちに宮中で市場を開いて晶物を売らせたり、また大臣たちに宮女たちと商売をさせ、その際わざと喧嘩の種をまいて自分と皇后を楽しませた。玄宗と楊責妃は歓楽のために数百人の宮妓、宦官を並べて「風流陣」(両陣に分れて競う遊戯の一っ)をつくらせ、錦で旗をつくって互いに戦わせて楽しんだ(『開元天宝遺事』巻下)。皇帝は名声と身分の高い后妃たちに対しては、常に一定の尊重の気持をもっていたが、宮女たちに対しては気の向くままに戯れたり、もて遊んだりすることができた。玄宗の時代、皇帝の寝所に侍ったお手付きの宮女は、皆腕に「風月常新」(男女の情愛は常に新しい、という意)の四文字を刻印され、そこに桂紅膏(赤色のクリーム)を塗られたので、水洗いしても色があせなかった。また穆宗は黒い絹布の上に白色の文字を書き、また白い絹布に黒色の文字を書き、合せて衣服をつくって「寵愛を受けた」宮女に下賜した。その衣服に書かれた文字はすべて見るに耐えない卑摂な言葉であり、人々はこれを「渾衣」(ざれごとを書いた衣)と呼んだ(馮贅『雲伯雑記』巻五、七)。これらは風流のようにも見えるが、実際は宮女を玩具にし、人格を踏みにじったことの明らかな証拠である。

 さらに不幸なのは、亡き皇帝の霊の弔いを命ぜられた「奉陵宮人」とか、「陵園妾」とか呼ばれる女性であった。唐朝の制度では「およそ皇帝の崩御にあたっては、子の無い宮女は悉く山陵に遣わし、朝な夕な、洗面用具を揃え、夜具を整えて、あたかも生者に仕えるように死者に仕えさせた」(『資治通鑑』巻二四九、宣宗大中十二年、胡三省注)。この他、各種の罪に対する罰として陵園(皇帝の御陵園地)に入れられた宮女もいた。いわゆる「潅に因りて罪を得 陵に配され来たりし」(白居易「陵園妾」)者であった。宣宗は即位すると、穆宗の宮人をすべて各地の陵園に押し込んでしまった。宣宗は穆宗を憎んでいたので、宮人たちも一緒に罰したのである。「山宮一たび閉ざされて開く日無く、未だ死せざれば此の身をして出でしめず」であり、「顔色は花の如く命は葉の如し」(白居易「陵園妾」)であったこれらの宮人は、半生を陰惨でもの寂しい陵墓に、自ら墓に入るその日までずっとお仕えしなければならなかった。

 

 宮島0006

花間集 張泌 《浣溪沙十首》

浣溪沙十首其一

鈿轂香車過柳堤,樺煙分處馬頻嘶,為他沉醉不成泥。

花滿驛亭香露細,杜鵑聲斷玉蟾低,含情無語倚樓西。

(浣溪沙十首 其の一)
鈿轂【でんこく】香車 柳堤を過ぐ,樺煙【かえん】分かるる處 馬 頻りに嘶く,他が為に沉醉するも泥を成さず。
花は驛亭に滿ち 香露 細やかなり,杜鵑 聲 斷え 玉蟾【ぎょくぜん】低し,情を含んで語ること無く 樓西に倚る。

浣溪沙十首其二

馬上凝情憶舊遊,照花淹竹小溪流,鈿箏羅幕玉搔頭。

早是出門長帶月,可堪分袂又經秋,晚風斜日不勝愁。

(浣溪沙十首其の二)馬上 凝情 舊遊を憶い,照花 淹竹 小溪の流れ,鈿箏 羅幕 玉として頭を搔く。早に是こに出門 月も長帶たり,堪える可し 袂を分ち 又た秋も經るを,晚風 斜日 愁に勝らず。

浣溪沙十首其三

獨立寒堦望月華,露濃香泛小庭花,繡屏愁背一燈斜。

雲雨自從分散後,人間無路到仙家,但憑魂夢訪天涯。

(浣渓沙 十首 其の三)独り寒堦【かんかい】に立ちて 月華を望む、露 濃く 香り 泛く 小庭の花、繍屏【しゅうへい】に 愁い背きて 一灯 斜めなり。雲雨 分散してより後、人間 路の仙家に到る無く、但だ魂夢を憑【たの】みて 天涯を訪ぬ。

浣溪沙十首其四

依約殘眉理舊黃,翠鬟擲一簪長,暖風晴日罷朝粧。

閑折海棠看又撚,玉纖無力惹餘香,此情誰會倚斜陽。

(浣溪沙十首 其の四)約に依り眉を殘し舊黃を理し,翠鬟【すいかん】擲【ほうてき】一簪【いちしん】長じ,暖風 晴日 朝粧を罷む。閑にして海棠を折り 看 又た撚じ,玉纖 力無く 餘香に惹かる,此の情 誰れに會うのか 斜陽に倚る。

浣溪沙十首其五

翡翠屏開繡幄紅,謝娥無力曉粧慵,錦帷鴛被宿香濃。

微雨小庭春寂寞,鷰飛鶯語隔簾櫳,杏花凝恨倚東風。

(浣渓沙 十首 其の五)翡翠 屏開き 繡幄【しゅうあく】の紅,謝娥 力無く 曉粧の慵,錦帷 鴛被 宿香濃く。微雨 小庭 春 寂寞たり,鷰飛 鶯語 簾櫳を隔ち,杏花 凝恨 東風に倚る。

浣溪沙十首其六

枕障燻鑪隔繡幃,二年終日兩相思,杏花明月始應知。

天上人間何處去,舊歡新夢覺來時,黃昏微雨畫簾垂。

(浣渓沙 十首 其の六)枕障 燻鑪 繡幃を隔つ,二年 終日 兩つながら相い思い,杏花 明月 始めて應に知る。天上 人間 何處に去り,舊歡 新夢 時に來るを覺ゆ,黃昏 微雨 畫簾垂る。

浣溪沙十首其七

花月香寒悄夜塵,綺筵幽會暗傷神,嬋娟依約畫屏人。

人不見時還暫語,令纔後愛微嚬,越羅巴錦不勝春。

(浣渓沙 十首 其の七)花月 香り 寒く 夜塵 悄まり、綺筵の幽会 傷神を暗にし、嬋娟 依約として画屏の人。人 見ざる時 還た暫く語り、纔かにたしむるの後 愛みて微かに嚬み、越羅、巴錦も春に勝えず。

浣溪沙十首其八

偏戴花冠白玉簪,睡容新起意沉吟,翠鈿金縷鎮眉心。

小檻日斜風悄悄,隔簾零落杏花陰,斷香輕碧鏁愁深。

(浣渓沙 十首 其の八)偏戴 花冠 白玉の簪,睡容 新起 意沉吟,翠鈿 金縷 鎮眉心。小檻 日斜 風悄悄たり,簾を隔てて零落 杏花の陰,斷香 輕碧 鏁愁深。

浣溪沙十首其九

晚逐香車入鳳城,東風斜揭繡簾輕,慢迴嬌眼笑盈盈。

消息未通何計是,便須佯醉且隨行,依稀聞道大狂生。

(浣渓沙 十首 其の九)晚 香車を逐い 鳳城に入る,東風 斜に揭げ 繡簾輕し,慢く迴り 嬌眼 笑み盈盈【えんえん】たり。消息 未だ通わず 何ぞ是を計る,便ち須らく佯醉し 且く隨行し,依稀に聞道【きくなら】く大狂生なり と。

浣溪沙十首其十

小市東門欲雪天,眾中依約見神仙,蘂黃香畫貼金蟬。

飲散黃昏人草草,醉容無語立門前,馬嘶塵烘一街煙。

(浣渓沙 十首 其の十)小市 東門 雪天に欲し,眾中 依約 神仙を見,蘂黃 香畫 金蟬を貼る。飲散 黃昏 人草草たり,醉容して語る無し 門前に立ち,馬嘶き 塵烘【じんこう】一街の煙。

 宮島0011

 

 

花間集 教坊曲《巻四34 浣渓沙十首 其八》張泌

 

 

花間集 訳注解説

 

 

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ8810

 

 

 

(改訂版Ver.2.1

浣溪沙十首其一

(西に向かう旅人との別れを題材にしたよくある別れを詠う)

鈿轂香車過柳堤,樺煙分處馬頻嘶,為他沉醉不成泥。

螺鈿の車は柳の堤の道を西に向い過ぎて行く。樺の灯火の煙は漂い、最後の別れの朝には旅立つ馬もしきりに噺く。朝早く旅立つにあたって、酔いが醒めていなければ、不覚なので、夕べの宴会では深酔いすることはないものなのだ。

花滿驛亭香露細,杜鵑聲斷玉蟾低,含情無語倚樓西。

駅亭をめぐって、花は咲き満ちていて、香しき夜の露は細やかなものである。杜鵑の声途絶え、名残の月は傾きてみえない。思いを秘めて言葉なく西にむかったひとを高殿に身を寄せておもう。

 

(浣溪沙十首 其の一)

鈿轂【でんこく】香車 柳堤を過ぐ,樺煙【かえん】分かるる處 馬 頻りに嘶く,他が為に沉醉するも泥を成さず。

花は驛亭に滿ち 香露 細やかなり,杜鵑 聲 斷え 玉蟾【ぎょくぜん】低し,情を含んで語ること無く 樓西に倚る。

 

(改訂版Ver.2.1

溪沙十首其二

(寵愛を受け、何不自由なく、楽しいおもいの日々に分袂すると、宮殿の御門、夜明け前に帰っていくあのお方の姿を追う、哀しい妃嬪の思いを詠う。)

馬上凝情憶舊遊,照花淹竹小溪流,鈿箏羅幕玉頭。

馬上には思いを一身に集めるお方がいて、そして、楽しい日々は続いており、今も、夕べのことを思い浮かべている、咲き誇る花に朝日に照らされ、竹林の小路に入っていくと、小川が流れている誰にも気兼ねせず静かに過ごす、螺鈿の琴が奏でられ、薄絹のとばりに、漢の武帝の李夫人を思わせる「玉搔頭」を飾り何不自由のない生活を送る。

早是出門長帶月,可堪分袂又經秋,風斜日不勝愁。

眠れず少し早く起き出し、門を出ると、涙があふれて有明けの月を見上げると長く帯のようににじんで見える。あの人とは【分袂】してから、また、この夜長の秋をひとりで堪えなければいけない。夕方の風が抜けてゆき、日が傾いて、この愁いを克服するものはなにもない。

(浣溪沙十首其の二)

馬上 凝情 舊遊を憶い,照花 淹竹 小溪の流れ,鈿箏 羅幕 玉として頭を搔く。

早に是こに出門 月も長帶たり,堪える可し 袂を分ち 又た秋も經るを,晚風 斜日 愁に勝らず。

 

(改訂版Ver.2.1

浣渓沙 十首 其三

浣渓沙 十首 その三 (朝雲暮雨と寵愛を受けていても、それを失えば、宮殿への道は天涯に阻まれるように遠いものとなると妃嬪を詠う。)

獨立寒望月華,露濃香泛小庭花,屏愁背一燈斜。

寒々とした宮殿の階に独り佇み、仲秋の月を眺めれば、露に濡れた寝殿前の庭の花は香しき香を放つ。寝牀の側の屏風を背にする灯火一つ愁わしく火影を揺らすだけ。

雲雨自從分散後,人間無路到仙家,但憑魂夢訪天涯。

巫山神女の故事のように「朝雲暮雨」いつも一緒であったのに、別れて後は、人間ではその仙界の館に訪ねるすべはこの世にないのである、ということだと、できるのはただ夢の場合だけだが、しかも空のはてを訪ねるという大変な事なのだ。

(浣渓沙 十首 其の三)

独り寒堦【かんかい】に立ちて 月華を望む、露 濃く 香り 泛く 小庭の花、繍屏【しゅうへい】に 愁い背きて 一灯 斜めなり。

雲雨 分散してより後、人間 路の仙家に到る無く、但だ魂夢を憑【たの】みて 天涯を訪ぬ。

 

(改訂版Ver.2.1

浣溪沙十首 其四

浣渓沙 十首 その四(若い時は、薄化粧でも、あまり気にせず、ただ、一緒に過ごすことを楽しんだ、寵愛を失って、歳を重ねた妃嬪は、同じ春が来て、花束を作ってみてもただ一日陽だまりで一人過ごすだけである)

依約殘眉理舊,翠鬟擲一簪長,暖風晴日罷朝粧。

もうかすかに消えかかった眉のまま、花鈿の黄蕊も黄玉又以前のままで、緑の丸髷の黒髪は簪を抜いて擲って長いまま。寵愛を一手に受けている時は、春の日は暖かにまもられ、晴れやかに日は射している、朝の化粧直しはしなくても許されたものだ。

閑折海棠看又撚,玉纖無力惹餘香,此情誰會倚斜陽。

今又、春の日に、海棠の花を静かに摘み取って、じっと見つめ、それから、花をよじって、からませると、玉のようなか細い指に力がなくても、花の香りは十分に広がり、素敵に惹かれる。このあのお方への思いはかわりはしないけれど、誰が逢ってくれるのか、このはるも、ひとり傾いた日差しの中に窓辺に倚りかかっている。

(浣溪沙十首 其の四)

依約に眉を殘し 舊を理えて,翠鬟【すいかん】擲【ほうてき】一簪【いちしん】長じ,風暖く 日晴れ 朝粧を罷む。

閑に海棠を折り 看 又た撚じ,玉纖 力無く 餘香に惹かる,此の情 誰れにか會わん 斜陽に倚る。

 

(改訂版Ver.2.1

浣渓沙 十首 其五

翡翠屏開幄紅,謝娥無力曉粧慵,錦帷鴛被宿香濃。

翡翠の屏風が開かれ、幔幕に、刺繍のあげばりの中に、花の中に、頬を赤くする。あれほど美しかった妃嬪も年を重ね、寵愛を失えば無気力になり、夜明けの化粧をしなくなり、にしきのとばりの内におしどりの掛布も能く滲みこませたお香が強くかおる。

微雨小庭春寂寞,飛鶯語隔簾,杏花凝恨倚東風。

春の細雨は寝殿前の中庭には春なのに寂しさと空しさが広がり、ツバメが飛び交い、鶯が春を告げているのにすだれの籠檻のなかで隔離されているようなものだ。杏の花の季節には恨みを凝り固まるものであり、東の風に向かって正門に倚りかかる。

浣渓沙 十首 其の五

翡翠 屏開き 幄【しゅうあく】の紅,謝娥 力無く 曉粧の慵,錦帷 鴛被 宿香濃く。

微雨 小庭 春 寂寞たり,飛 鶯語 簾を隔ち,杏花 凝恨 東風に倚る。

 

 

(改訂版Ver.2.1

浣渓沙 十首其六

(寵愛を失い、行事などにも呼ばれなくなって初めて、妃嬪の立場の悲しさくるしさを認識するもの)

枕障燻鑪隔幃,二年終日兩相思,杏花明月始應知。

使わない枕、障子、香炉の火もたたらのようにかたまったまま、そして、刺繍の垂れ幕も使わなくなってしまった。恋慕の思いのまま終日過ごす日々は二年になる。それでも、杏の花に時期の行事、中秋節にも呼ばれなくなって初めて妃嬪の将来を理解する。

天上人間何處去,舊歡新夢覺來時,昏微雨畫簾垂。

天上界といわれる天子の寵愛の行動は、寵愛を失うという人間界の現実、天子の心は、何処に去って行ってしまったのか、だから楽しく過ごした出来事は、あらたには夢でしか再びあうことはできない、「朝雲暮雨」日暮れてくれば微かな雨となって簾の中にいるだけで、歳を重ねてゆくだけである。

浣渓沙 十首 其の六

枕障 燻鑪 繡幃を隔つ,二年 終日 兩つながら相い思い,杏花 明月 始めて應に知る。

天上 人間 何處に去り,舊歡 新夢 時に來るを覺ゆ,黃昏 微雨 畫簾垂る。

 

(改訂版Ver.2.1

浣渓沙 十首其七

(選ばれた妃嬪が恋に落ちて、快楽におぼれたと詠う)

花月香寒悄夜塵,綺筵幽會暗傷神,嬋娟依約畫屏人。

花の下に万幕を張り、花と月見の筵をする、冷えてきたので香爐に火をいれ、夜は清くふけてゆき、奇麗な筵を敷き、しかも容姿のあでやかで美しさといえばさながら屏風絵の美人のようであるだけに、二人だけで過ごすのはだれにもしられたくない。

人不見時還暫語,令纔後愛微,越羅巴錦不勝春。

人目につかぬその時、わずかの間に言葉を交わして返事をする、人目をさけての恋は悦楽と苦悶の顔をする。美しき越地方産の薄絹と蜀産の錦の衣裳を寄贈しても春の思いにまさるものではないのだ。

(浣渓沙 十首 其の七)

花月 香り 寒く 夜塵 悄まり、綺筵の幽会 傷神を暗にし、嬋娟 依約として画屏の人。

人 見ざる時 還た暫く語り、纔かにたしむるの後 愛みて微かに嚬み、越羅、巴錦も春に勝えず。

 

 

(改訂版Ver.2.1

浣渓沙 十首其七

(選ばれた妃嬪が恋に落ちて、快楽におぼれたと詠う)

花月香寒悄夜塵,綺筵幽會暗傷神,嬋娟依約畫屏人。

花の下に万幕を張り、花と月見の筵をする、冷えてきたので香爐に火をいれ、夜は清くふけてゆき、奇麗な筵を敷き、しかも容姿のあでやかで美しさといえばさながら屏風絵の美人のようであるだけに、二人だけで過ごすのはだれにもしられたくない。

人不見時還暫語,令纔後愛微,越羅巴錦不勝春。

人目につかぬその時、わずかの間に言葉を交わして返事をする、人目をさけての恋は悦楽と苦悶の顔をする。美しき越地方産の薄絹と蜀産の錦の衣裳を寄贈しても春の思いにまさるものではないのだ。

(浣渓沙 十首 其の七)

花月 香り 寒く 夜塵 悄まり、綺筵の幽会 傷神を暗にし、嬋娟 依約として画屏の人。

人 見ざる時 還た暫く語り、纔かにたしむるの後 愛みて微かに嚬み、越羅、巴錦も春に勝えず。

(改訂版Ver.2.1

浣渓沙 十首 其八

(寵愛を受け続けている時も、不安な気持ちで過ごしていた、今もう何度も春を一人で過ごしていく寂しい妃嬪を詠う。)

偏戴花冠白玉簪,睡容新起意吟,翠鈿金縷鎮眉心。

花冠は髷からかたよってつけ、輝く白玉の簪が揺れ,よこになってねむり、そして、新たに起きあがり、思いをそっと小さな声で吟じる。翡翠や花鈿の飾、金の細い絲のかざり、寵愛を一手に受けていても、心配で眉をひそめ、気がかりな心のままである。

小檻日斜風悄悄,隔簾零落杏花陰,斷香輕碧愁深。

小さな檻のようなこの閨に、斜になった日のひかりがさし、風はショウショウと静かでもの寂しくふいている。妃嬪もこの春を過してまた歳を重ねた、簾越に庭の杏花も枯れ落ちてゆく。花の香りも、お香もすでに斷たれ、薄く明るい緑色に染まり、部屋の鍵は締まっていて、愁いは深くなるだけなのだ。

浣渓沙 十首 其の八

偏戴 花冠 白玉の簪,睡容 新起 意吟,翠鈿 金縷 鎮眉心。

小檻 日斜 風悄悄たり,簾を隔てて零落 杏花の陰,香を斷ち 輕やかに碧なし 鏁 愁い深し。

 

 

(改訂版Ver.2.1

『浣渓沙 十首』 現代語訳と訳註

(本文)

浣渓沙 十首 其八

偏戴花冠白玉簪,睡容新起意沉吟,翠鈿金縷鎮眉心。

小檻日斜風悄悄,隔簾零落杏花陰,斷香輕碧鏁愁深。

 

(下し文)

浣渓沙 十首 其の八

偏戴 花冠 白玉の簪,睡容 新起 意沉吟,翠鈿 金縷 鎮眉心。

小檻 日斜 風悄悄たり,簾を隔てて零落 杏花の陰,香を斷ち 輕やかに碧なし 鏁 愁い深し。

 

(現代語訳)

(寵愛を受け続けている時も、不安な気持ちで過ごしていた、今もう何度も春を一人で過ごしていく寂しい妃嬪を詠う。)

花冠は髷からかたよってつけ、輝く白玉の簪が揺れ,よこになってねむり、そして、新たに起きあがり、思いをそっと小さな声で吟じる。翡翠や花鈿の飾、金の細い絲のかざり、寵愛を一手に受けていても、心配で眉をひそめ、気がかりな心のままである。

小さな檻のようなこの閨に、斜になった日のひかりがさし、風はショウショウと静かでもの寂しくふいている。妃嬪もこの春を過してまた歳を重ねた、簾越に庭の杏花も枯れ落ちてゆく。花の香りも、お香もすでに斷たれ、薄く明るい緑色に染まり、部屋の鍵は締まっていて、愁いは深くなるだけなのだ。

 

(訳注) (改訂版Ver.2.1

浣渓沙 十首 其八

89. (寵愛を受け続けている時も、不安な気持ちで過ごしていた、今もう何度も春を一人で過ごしていく寂しい妃嬪を詠う。)

90.【構成】唐の教坊の曲名。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦7⑦⑦.の詞形をとる。韋荘は同名の詩五首載せている。

浣溪沙十首其一

鈿轂香車過柳,樺煙分處馬頻,為他沉醉不成

花滿驛亭香露細,杜鵑聲斷玉蟾,含情無語倚樓西

●○○  ●●○○ ○●

○●●○○●● ●○○●●○○  ○○○●○○

浣溪沙十首其二

馬上凝情憶舊遊 照花淹竹小溪流 鈿箏羅幕玉搔頭。

早是出門長帶月 可堪分袂又經秋 晚風斜日不勝愁。

●●○●●○  ●○●●○○ ○○●●○○

●●●○●● ●○●●  ○●△△

浣溪沙十首其三

獨立寒堦望月,露濃香泛小庭,繡屏愁背一燈

雲雨自從分散後,人間無路到仙,但憑魂夢訪天

●●○○  ●○○●●○○ ○●●○○ 

○●●△△●● ○●●○○  ○○●○○

浣溪沙十首其四

依約殘眉理舊黃 翠鬟擲一簪長 暖風晴日罷朝

閑折海棠看又撚 玉纖無力惹餘香 此情誰會倚斜

●○○●●○ ●○○●●○ ○●○○

●○●● ●○○●●○○ ●○○●○○

浣渓沙 十首 其五

翡翠屏開繡幄,謝娥無力曉粧,錦帷鴛被宿香

微雨小庭春寂寞,鷰飛鶯語隔簾,杏花凝恨倚東

●●○●●○ ●○○●● ●○○●●○○

○●●○○●● ●○○●●○○ ●○

浣渓沙 十首 其六

枕障燻鑪隔繡,二年終日兩相,杏花明月始應

天上人間何處去,舊歡新夢覺來,黃昏微雨畫簾垂。

△△○○●●○ ●○○●●△△ ●○○●●

○●○△△●● ●○○ ○○○●●○○

浣渓沙 十首 其七

花月香寒悄夜,綺筵幽會暗傷,嬋娟依約畫屏

人不見時還暫語,令纔後愛微,越羅巴錦不勝

○●○○●●○ ●○○●● ○○●●

●○○●● △△○●●○○ ●○○●△△

浣渓沙 十首 其八

偏戴花冠白玉,睡容新起意沉,翠鈿金縷鎮眉

小檻日斜風悄悄,隔簾零落杏花,斷香輕碧鏁愁

●○●●○  ●○○●●○ ○●●○○

●●●○●● ●○●●○○  ●○

 

偏戴花冠白玉簪,睡容新起意沉吟,翠鈿金縷鎮眉心。

花冠は髷からかたよってつけ、輝く白玉の簪が揺れ,よこになってねむり、そして、新たに起きあがり、思いをそっと小さな声で吟じる。翡翠や花鈿の飾、金の細い絲のかざり、寵愛を一手に受けていても、心配で眉をひそめ、気がかりな心のままである。

91. ・偏戴花冠白玉簪 寵愛を受ける閨でのようすをいう。髷は傾き、花の冠をつけ、輝く宝飾の簪が揺れる。

92. ・睡容新起意沉吟 この句はいまの女の心の動きを詠う。・沉吟 思い迷う,決めかねてぶつぶつ呟(つぶ/や)く.・睡容 ねすがた。

93. ・翠鈿金縷鎮眉心 ・翠:翡翠のかざり。・鈿:古代婦女の顔面の上に花鈿飾物をつけること。

温庭筠『菩薩蠻 九』

牡丹花謝聲歇,綠楊滿院中庭月。

相憶夢難成,背窗燈半明。

翠鈿金壓臉,寂寞香閨掩。

人遠淚闌幹,燕飛春又殘。

『菩薩蠻 九』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-9-9-#9 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1652

94. ・縷 金の糸。また、金色の糸。

 

 

小檻日斜風悄悄,隔簾零落杏花陰,斷香輕碧鏁愁深。

小さな檻のようなこの閨に、斜になった日のひかりがさし、風はショウショウと静かでもの寂しくふいている。妃嬪もこの春を過してまた歳を重ねた、簾越に庭の杏花も枯れ落ちてゆく。花の香りも、お香もすでに斷たれ、薄く明るい緑色に染まり、部屋の鍵は締まっていて、愁いは深くなるだけなのだ。

95. ・檻 猛獣や罪人が逃げないように入れておく、鉄格子などを使った頑丈な囲い、または室。

96・悄悄 1 元気がなく、うちしおれているさま。悄然。「として引き返す」 2 静かでもの寂しいさま。 すごすご【悄悄】: [副]気落ちして元気がないさま。また、元気なくその場をたち去るさま

97. ・杏花 ピンク色の花。 桜とよく似ている。 開花は桜より少しだけ早いようだ。 幹の部分は桜と同じく 横向きの線が入る。閨怨詩では女性自身に喩えられる。

98. ・鏁 . 0 戸・箱の蓋(ふた)などにつけて,自由に開閉できないようにする金具。  -をさす」  -をおろす」. . 1 錠剤。

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