花間集 訳注解説 (199)回目巻四 牛嶠-3 【字解集】 a.菩薩蠻七首 b.酒泉子 c.定西番 d.玉樓春 e.西溪子 f.江城子二首 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ8762
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花間集 訳注解説 (199)回目巻四 牛嶠-3 【字解集】 a.菩薩蠻七首 b.酒泉子 c.定西番 d.玉樓春 e.西溪子 f.江城子二首 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ8762
【字解集】 a.菩薩蠻七首
菩薩蠻七首 其一
1.(寵愛を受ける時は短く、ツバメが来て、しばらくヒナがうるさくし始める頃にはすでに寵愛を失う。そのごは、毎日、寵愛を受けていた時と同じようにただ、待ち続ける毎日が繰り返される。まるでどこか北の遠くの遼陽に送り出した人を待つ寡婦と同じようになってしまうと詠う)
2. 【解説】こんなにも寵愛を受けられないのは、辺境に出かけて帰らぬ男を思う女の情のようである。それでも妃嬪は、寵愛を失っても、ひたすら待つしかない。この詩は「愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。」と愁いがすべてをくずれてゆくという表現に象徴される。この詩が、辺境に出かけて帰らぬ男を思う女の情であり、遙かな男へ思いを馳せ、屏風の陰に引き籠もり、遅々として進まぬ春の日長の所在なさについて語るというだけの詩であるはずはなく、毎日労働もせず、豪華な着物を見に着け、大きな部屋に住まい出来る、富貴の者の愛妾か、踊りなどを担当する、美人身分の妃嬪と推察できる。宮中の内官制度で妃嬪は皇后を補佐し、六儀は。九卿に四徳を教え、皇后の儀礼を讃える。美人は、女冠を率いて祭礼接客を事とし、才人は宴会、寝所の世話、絲枲をおさめ、織り上がった反物を帝に献ずる。何もしなくて生活できる女性は、限られた地位の者だけである。
3.【構成】唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。
菩薩蠻七首 其一
舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。
門外柳花飛,玉郎猶未歸。
愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。
何處是遼陽,錦屏春晝長。
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4. 春暖 薫きしめた香の香りが暖かく感じられる。この頃の香炉は、暖房も兼ねていたから、この事で着る服は外套のものではなく踊用の薄手の服をイメージさせる。
5. 舞裙 妃嬪、宮女妓優などの演舞の際のスカート。牛嶠《巻三50柳枝五首其五》「裊翠籠煙拂暖波,舞裙新染麴塵羅。」翡翠の髪飾りが妖艶に揺れ、香煙は香炉の網を抜けて細く揺れ起ちあがり、暖かな風波に払われて揺れている。舞い踊る女たちの裙はみだれ、その下のあらたに麴塵色に染められたうす絹が見えて奇麗だ。
牛嶠《巻三50 柳枝五首 其五》『花間集』151全詩訳注解説(改訂版)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5957
6. 金泥鳳 鳳凰が巣作りをする画を金絲で刺繍されている。舞踊担当の妃嬪(美人)。
唐:李存勖(885年-926年)《陽臺夢》
薄羅衫子金泥鳳,困纖腰怯銖衣重。笑迎移步小蘭叢,嚲金翹玉鳳。
嬌多情脈脈,羞把同心捻弄。楚天雲雨卻相和,又入陽臺夢。
①金泥鳳:這裏指羅衫的花色點綴。②銖衣:衣之至輕者。多指舞衫。③嚲:下垂。金翹、玉鳳:皆古代婦女的首飾。④同心:即古代男女表示愛情的“同心結”。⑤陽臺:宋玉《高唐賦序》:楚襄王嘗遊高唐,夢一婦人來會,自雲巫山之女,在“高臺之下”。舊時因稱男女歡會之所爲“陽臺”。
7. 柳花 綿毛の生えた柳の種。柳絮の飛ぶのは春の一時期であることから、春が過ぎてゆく憂いを表現する。
8. 玉郎 美男。ここでは愛しい男の意。古代女子對其夫、或所歡愛的男子的暱稱。唐.牛嶠〈菩薩蠻.舞裙香暖金泥鳳〉詞:「門外柳花飛,玉郎猶未歸。」道教中的仙官名。唐.李商隱〈重過聖女祠〉詩:「玉郎會此通仙籍,憶向天階問紫芝。」對男子的美稱。
韋莊《巻三11天仙子五首其四》「夢覺雲屏依舊空,杜鵑聲咽隔簾櫳,玉郎薄倖去無蹤。」
花間集』全詩訳注解説(改訂版)-33韋荘111《巻3-11 天仙子五首 其四》三巻11-〈111〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5757
9. 愁勻 愁いは~にあまねし。朱松 太康道中二首其二 「一色春勻萬樹紅,坐愁吹作雪漫空。誰知榆莢楊花意,只擬春殘卷地風。」
10. 春山 女件の美しい眉を言う。愁いに染まり、眉には愁いに曇る女性を表現するがそれがとても美しく見えることをいう。
李商隠《代贈二首 其二》 「總把春山掃眉黛、不知供得幾多愁。」(あなたのいない今、あまたの男を相手にしてきたが眉墨でまゆを画く、自分も年を取ってきた、幾多の愁いを伴ってここまで来たのだがどこまで知ってくれているだろう。)○総把 全てを束にして握る。
11. 春山 男女の情欲の気持ちのかたまり。○掃眉 まゆをかく。 ・眉黛眉毛を剃って墨で描いたまゆ。眉には年を取ってくるという意味を含む。
代贈二首 其二 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 98
溫庭筠《菩薩蠻十四首 其十二》「繡簾垂箓簌,眉黛遠山綠。」(この生き方も仕方ないこととし、刺繍をした簾には道教のお札を張り、涙が垂れる様に、すだれを止める房が垂れ下っている。そのすだれをかかげて、遠い山々をながめるとみどりのまゆずみを掃いたかのようにうすくかすんで、近い所におわすお方も遠い存在となってしまった。)
『花間集』全詩訳注解説(改訂)-1溫庭筠12《菩薩蠻十四首 其十二》溫庭筠66首巻一12-〈12〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5257
12. 遼陽 遼寧省南部遼陽。古代より軍事上の重要都市であったため、なかなか帰ってこれないということの表現として使う。実際に行ってはいないと思われる。
13. 春晝長 季節の移ろいを表現するのと、怠惰になってゆくことを表現する。
菩薩蠻七首 其二
14. (旅に出かけて帰らぬ男を思う女の情を詠う。)その二
15. 【解説】東門から旅出つ高官の男をみおくる女の情を詠う。末句は、遙かな男を忘れ、いっそほかの男に抱かれてしまおうかという思いを詠う。一夫多妻制のころである旅立つ男に、「早く帰ってくれなければ別の男に抱かれてしまいますよ」と云っているもの。
16. 【構成】唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。
菩薩蠻七首 其二
柳花飛處鶯聲急,暗街春色香車立。
金鳳小簾開,臉波和恨來。
今宵求夢想,難到青樓上。
贏得一場愁,鴛衾誰並頭。
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17. ・柳花飛處鶯聲急 柳絮は晩春にうつっていくから鶯の啼き声さえ、どうやら急ぎ始めたようだというほどの意。
18. ・暗街 暗い街。くらがりの街。よるの街。くろずむ町、街の深いところ。暗に、ひそかに。ここは日が落ち、街を暗くして行くようすをいう。
19. ・香車立 朝廷の高官の旅立ちの御車を云う。
20. 小簾 車の小窓の簾。
21. 臉波 清らかな目のような波。唐·白居易·《天津橋》詩:「眉月晚生神女浦,臉波春傍窈娘堤。」唐·韋莊·《漢州詩》:「十月醉眠金雁驛,臨岐無恨臉波橫。」張泌《巻五02江城子其二》浣花溪上見卿卿,臉波秋水明,黛眉輕。
22. 和恨 うらむことをなごませる。
23. ・青樓 青く塗った高殿で、身分に高い人の家。高貴な女性の住む家。遊女の入るところ。妓楼。
旅立つ人は東、青の門から出る。見送りはその門からさらに東にある高楼で最後の夜を過ごすのである。
24. ・贏得 利益を得ること。獲得すること。
25. ・鴛衾 鴛鴦の模様の布団は一緒に過ごすベットに架けられている。
菩薩蠻七首 其三
26. 菩薩蠻七首 其の三:(寵愛を受ける春の日々は最高の思いで過ごすが、寵愛を失っても、準備だけはしておくのがさだめだと詠う)
27. 唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。
菩薩蠻七首 其一
舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。
門外柳花飛,玉郎猶未歸。
愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。
何處是遼陽,錦屏春晝長。
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△●●○○ ●△○●△菩薩蠻七首 其二
柳花飛處鶯聲急,暗街春色香車立。
金鳳小簾開,臉波和恨來。
今宵求夢想,難到青樓上。
贏得一場愁,鴛衾誰並頭。
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菩薩蠻七首 其三
玉釵風動春幡急,交枝紅杏籠煙泣。
樓上望卿卿,䆫寒新雨晴。
薰爐蒙翠被,繡帳鴛鴦睡。
何處有相知,羨他初畫眉。
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28. ・玉釵 こがねにかがやく天子からの贈り物の簪。
溫庭筠 巻一02 菩薩蠻十四首其二「雙鬢隔香紅,玉釵頭上風。」
溫庭筠 巻一25 酒泉子四首其三 「玉釵斜篸雲鬟髻,裙上金縷鳳。」
牛嶠 巻四10 應天長二首其二 「玉釵橫,山枕膩,寶帳鴛鴦春睡美。」
牛嶠 巻四11 更漏子三首其一 「收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。」
牛嶠 巻四17 菩薩蠻七首其三 「玉釵風動春幡急,交枝紅杏籠煙泣。」
牛嶠 巻四25 西溪子 「捍撥雙盤金鳳,蟬鬢玉釵搖動。」
和凝 巻六16 臨江仙二首其一 「碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。」
孫光憲 巻八16 臨江仙二首其二 「玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。」
29. ・春幡 春旗。 古代における迎春と立春日までに旗を立てたり、或は春幡を樹梢に掛けたりする。
30. ・籠煙 竹かごの中の香の煙をいう。池端の柳が、冬の間に枝だけで垂れさがった様子を籠と表現し、香炉の上の籠と対比させて表現する。それが、これから草木が生繁る頃がすなわち匂うがごとき春の緑の煙霞に包まれた風景なのだろう。そこには陰陽判じがたい中に宿る生命の気配を感じることができる。
31. ・卿卿 卿卿 妻が夫を呼ぶ称。閨褥での言葉。南朝宋·劉義慶《世說新語·惑溺》:“親卿愛卿,是以卿卿,我不卿卿,誰當卿卿?”貴人と逢ってうれしい状況を云う。男女の情事の際の声を意味する。
32. ・䆫寒 䆫は窗、窓で晩秋の窓を云う。窓を寒いと感じ愧じるころの窓を云う。
33. ・薰爐 香と暖炉が一体となったもので、部屋が暖かくなることをいう。
34. ・蒙 1 おおう。かぶさる。こうむる。「蒙塵(もうじん)・蒙霧」2 くらい。物知らずで道理が わからない。「
35. ・翠被 織(或繡)有翡翠紋飾的被子。以翠羽飾被。被子:掛け布団.
36. ・畫眉 ①まゆずみでまゆをかくこと。②まゆずみでかいた美しい眉。転じて、美人をいう。③ほおじろ鳥。
菩薩蠻七首 其四
37. 菩薩蠻七首その四:(巫山の地に立って昔の「巫山の雲雨」を思われる、しかし、今ここには、山月、山花、燈燭の影、それもこれもなにごともなくときはながれていると詠う。)
38. 唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。
菩薩蠻七首 其一
舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。
門外柳花飛,玉郎猶未歸。
愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。
何處是遼陽,錦屏春晝長。
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△●●○○ ●△○●△菩薩蠻七首 其二
柳花飛處鶯聲急,暗街春色香車立。
金鳳小簾開,臉波和恨來。
今宵求夢想,難到青樓上。
贏得一場愁,鴛衾誰並頭。
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菩薩蠻七首 其三
玉釵風動春幡急,交枝紅杏籠煙泣。
樓上望卿卿,䆫寒新雨晴。
薰爐蒙翠被,繡帳鴛鴦睡。
何處有相知,羨他初畫眉。
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菩薩蠻七首 其四
畫屏重疊巫陽翠,楚神尚有行雲意。
朝暮幾般心,向他情漫深。
風流今古隔,虛作瞿塘客。
山月照山花,夢迴燈影斜。
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39. ・畫屏重疊 以前、寵愛を受けているころはあたりまえに使っていた屏風を折りたたんでかたずける、積み重ねる。
40. ・巫陽 『楚辭』「招魂」に出てくるみこの名。巫女。ただし性別不詳。蘇軾『歴代絶句類選』二 第八葉 『澄邁驛通潮閣二首 其二』「 餘生欲老海南村, 帝遣巫陽招我魂。 杳杳天低鶻沒處, 青山一髮是中原。」(澄邁驛の通潮閣 餘生老いんと欲す海南の村,帝巫陽をして 我が魂を招か遣【し】む。 杳杳たる天低【た】れて鶻沒するの處,青山一髮是れ中原。)
宋玉の「神女賦」に、「且に朝雲となり、碁に行雨となる」「朝雲暮雨。」の句がある。結句の「雲雨」に応じている。神女と雲雨は、雨が宋玉「高唐の賦」にある巫山神女の故事によるもので、懷王と交わった後、神女が「暮には行雨とならん」とどんな時でも一緒にいるといった意味を持つ雨である。楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させる。
41. ・楚神 巫山神女。
42. ・行雲意 戀意。行雲想:《桃花扇·訪翠》:“誤走到巫峰上,添了些行雲想,匆匆忘卻仙模樣。
43. ・朝暮 巫山の雲雨【ふざん‐の‐うんう】「朝雲暮雨。」
《宋玉の「高唐賦」の、楚の懐王が昼寝の夢の中で巫山の神女と契ったという故事から》男女が夢の中で結ばれること。また、男女が情を交わすこと。巫山の雲。巫山の雨。巫山の夢。朝雲暮雨 男女が愛し合い、片時も離れていられないほどの深い仲であることのたとえ。男女の情交のことも。中国の故事による。楚(そ)の懐王(かいおう)が夢の中で情を交わした女神が立ち去る時に、「朝は雲に、日暮れには雨となり、朝な夕なあなたのそばにおります」といったことから。
44. ・向他 他の情の方に向かう。
・漫 [訓]すずろそぞろ1 一面に満ちて覆うさま。「漫漫/瀰漫(びまん)・爛漫(らんまん)」2 むやみに広がって締まりがない。「漫然/散漫・冗漫・放漫」3 何とはなしに。気のむくまま
45. ・風流 なごり、遺風。美風の名残。高尚な趣。風雅。態度。様子。品格。歌舞。
46. ・虛作 むなしく~となる。才能のないものがむなしく作る。虚語。虚詞。虚想。虚辭。
47. ・瞿塘 瞿塘峡のこと。 瞿塘峡は三峡のもっとも上流にあり、西は重慶市奉節県の白帝城から、東は重慶市巫山県の大溪鎮までの区間である。四川盆地の東部では、東西方向に伸びる細長い褶曲山脈が多数平行に走っているが、その山脈のうち高さ1,000mを超える一本を長江本流が北西から東南へ貫通するところが瞿塘峡である。巫峡(ふきょう)、西陵峡(せいりょうきょう)と並び、三峡を構成する。別名は夔峡(ききょう)。
48. ・山月・山花 今何も変化なく過ぎてゆく遠くの景色、そこのある小さな花をいう。
49. ・夢迴 巫山の地にまつわる夢が廻る。
50. ・燈影斜 自分の間直にある、何の変化もない景色を指す。
参考 三首
巫山一段雲二首と別一首
李珣
巫山一段雲二首其一
有客經巫峽,停橈向水湄。
楚王曾此夢瑤姬,一夢杳無期。
塵暗珠簾卷,香消翠幄垂。
西風迴首不勝悲,暮雨灑空祠。
(長江の巫峡を過ぎる際の懐古の情と祠を訪ねて思い浮んだことを詠う。)
ここに旅人がいて、三峡・巫峡をくだろうとすると、棹を止め、楫を止めて、祠に停泊し、その後、水に臨む岸を見ながら、流れに沿って下流に向かうものである。
そこ巫峡の山には楚の懐王と瑤姫との伝説があり、宋玉の「高唐賦」に登場する夢の中で出会い、親しく交わるというものであるが、その夢は一度見ていると、果てしなくその逢瀬の約束は無限につづくのである。
だからその祠では、仮に雲が厚く閨が暗ければ、珠の簾を巻き上げるものであり、閨の香が絶えて消えてしまうと香の香りを逃がさないために、カワセミの雌の緑色のとばりを垂らすものだ。
それでも西風が吹けば、舟は出向できず、首を都の方にめぐらせて悲しい秋を迎えるものだし、巫山神女が雨となって夕暮れに降りはじめれば、何にもなかった祠にも潤いがそそがれるというものだろう。
巫山一段雲二首其一
客有り 巫峽を經て,橈を停め 水湄に向う。
楚王 曾て此れ 瑤姬を夢み,一び夢むが 杳として期無し。
塵【か】りに暗ければ 珠簾卷き,香消えれば 翠幄垂る。
西風 首を迴らせて悲に勝らず,暮雨 空祠を灑う。
巫山一段雲二首其二
古廟依青嶂,行宮枕碧流。
水聲山色鏁粧樓,往事思悠悠。
雲雨朝還暮,煙花春復秋。
啼猿何必近孤舟,行客自多愁。
(長江の巫峡を過ぎる際の懐古の情と祠を訪ねて、ここの景色と気風によって思い浮んだことを詠う。)
楚の懐王が巫山の神女のために建てたとされる古廟は十二の翠の山に寄り添うようにあり、楚の行在所であった宮は碧き流れを臨んで、長江の傍らにたっている。
渓谷に響く水の流れの音とみなもにうつる山の色をふかくし、その中に美しい高殿を包み込んでいる、過ぎ去りし昔のことがこの景色と気風によって果てなく偲ばれてくる。
高唐の賦にいう「朝雲暮雨」となって、陽台の下で待っているといった瑶姫とその懐王の逢瀬、花曇りの春の盛りからまた秋の寒花のかおる時もその時節に応じてしのばれる。
この巫山の山と三峡の流れに、どういうわけか、舟近くに悲しき猿の鳴き声を聞くのは二人の恋は悲恋であったというのであろうか、ここを旅するものたちは、別れてきてことを思い出し、自然と愁いが多くなる。
(巫山、一段の雲 二首其の二)
古廟 依青嶂,行宮枕碧流。
水聲山色鏁粧樓,往事思悠悠。
雲雨朝還暮,煙花春復秋。
啼猿何必近孤舟,行客自多愁。
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毛文錫『巫山一段雲一首』
雨霽巫山上,雲輕映碧天。
遠峯吹散又相連,十二晚峯前。
暗濕啼猿樹,高籠過客舡。
朝朝暮暮楚江邊,幾度降神仙。
(巫山の一段雲一首)
雨が霽【は】れる巫山の上り,雲は輕く碧天に映ゆ。
遠峯より吹散し又た相い連なる,十二晚峯の前なり。
暗に濕し 猿 樹に啼く,高籠は客舡を過る。
朝朝して暮暮し 楚江の邊,幾度 神仙の降れる。
(巫山十二峯は交わり、別れの場所であり、また、雨が降り交わり、朝が来て別れる。そんな巫山を詠う。)
神女の生まれ変わりの雨が朝には別れたために晴れ、巫山のあたりはすっかり澄み渡る。その空に神女と夜を過ごした雲が軽やかにすみきった青空に映えている。
遠くの峰々をこえて吹く風に雲は散らされ、そしてまた集まり、そして連なる、巫峡は暮れかかって、二人のわかれた十二峰には猿の鳴き声がこだまする。
暗くたれこめた雲があたりをくらくし、暗くなった樹を密かに濡らしたなかに猿がないているのだ。高い籠に揺られ見下ろすようにの巫峡のうえから旅人の乗る船を下に見ている。
朝が来て別れ、また朝になり、夕ぐれて交わり、また夕暮れていく、舟は下って楚の国、長江下流域ののほとり、ここにはここの神仙が幾たびも降りて交わるということだ。
【解説】 巫峡は古くから航行危険の難所であったことで、さしかかる前は娼屋を利用して勇気を奮い立たせて難所に向かった。民妓、道妓の施設があったもので,もしかすると死ぬかもしれないという中での女性が神女という呼び方をされてもおかしくない。こうしたことの前提で巫山の神女の故事ができあがっている。後段、巫山の雲は、長江を行き交う旅の船を下に見ながら、これまで、朝な夕なに、どれほど巫山の峰に降ったことであろうと、坐山の神女の故事に思いを馳せる。
菩薩蠻七首其五
51. 菩薩蠻七首其の五:(春の行楽に街で最も美しいといわれる、高貴な人の娘が門前から出かけようとすると街中の人が一目見ようと集まってくる。そこに白馬に乗った貴公子が、金の鞭をわざと落として気をひこうとしたという詩)
52. 【解説】杜甫や李白の、王維などの少年行の内容である。美しく高貴な女性に、気をひこうとしている貴公子を歌ったもの。
53. 【構成】唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。
菩薩蠻七首 其一
舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。
門外柳花飛,玉郎猶未歸。
愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。
何處是遼陽,錦屏春晝長。
●○○●○△● ●○●●○○△
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△●●○○ ●△○●△菩薩蠻七首 其二
柳花飛處鶯聲急,暗街春色香車立。
金鳳小簾開,臉波和恨來。
今宵求夢想,難到青樓上。
贏得一場愁,鴛衾誰並頭。
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菩薩蠻七首 其三
玉釵風動春幡急,交枝紅杏籠煙泣。
樓上望卿卿,䆫寒新雨晴。
薰爐蒙翠被,繡帳鴛鴦睡。
何處有相知,羨他初畫眉。
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△●●△○ ○△○●○
菩薩蠻七首 其四
畫屏重疊巫陽翠,楚神尚有行雲意。
朝暮幾般心,向他情漫深。
風流今古隔,虛作瞿塘客。
山月照山花,夢迴燈影斜。
●△△●○○● ●○△●△○●
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菩薩蠻七首 其五
風簾鷰舞鶯啼柳,粧臺約鬢低纖手。
釵重髻盤珊,一枝紅牡丹。
門前行樂客,白馬嘶春色。
故故墜金鞭,迴頭應眼穿。
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54. ・この二句は待ち遠しい春が来たことを春のアイテムを鏤めている。しかしその中に嬉しさ、楽しさというのは見いだせないのも特徴である。
55. 鷰舞鶯啼 鶯:黃鸝。燕子は飛舞し在し,黃鶯は鳴叫し在する。春光明媚の形容である。
56. 纖手 細くやわらかい手。牛嶠の《菩薩蠻七首其五》は陸機の《擬古詩、擬西北有高樓》にもとづいて作られたものである。
擬西北有高樓 (宮中で琴を弾じている、若くか細い美人を恋い慕う歌)
高樓一何峻。苕苕峻而安。綺窗出塵冥。飛階躡雲端。
佳人撫琴瑟。纖手清且閑。芳草隨風結。哀響馥若蘭。
玉容誰能顧。傾城在一彈。佇立望日昃。躑躅再三歎。
不怨佇立久。但願歌者歡。思駕歸鴻羽。比翼雙飛翰。
(綺窗は塵冥を出で、飛階は雲端を躡む。佳人は琴瑟を撫し、纖手は清く且つ閑かなり。)
57. ・釵重 この二句は上句は閨の状況。下句は庭のようすを云う。カンザシを挿したままで落ち欠けている。
58. ・盤珊 よろよろすること。盤散、盤姍、盤跚、槃散、蹣跚もおなじ。
59. ・一枝紅牡丹 庭に一本の赤いボタンの花を看る。ここは、若い女を指す。
60. ・行楽 当時は野山に出かけ酒を呑むことを万幕を張って楽しんだ。当時は春には靑姦というのは通常のことであったようだ。
61. ・白馬 しろうま。古くは、盟誓の際に乗る、あるいは。祭祀の犠牲にもちいる。白馬将軍:西涼の龐徳。龐徳が白馬に乗るのを常としていたため、関羽の軍勢は龐徳を白馬将軍と呼んで畏れた。
62. ・故故 ①鳥などの啼き声。白居易 《人定》詩: “誰定教鸚鵡, 故故語相驚。”②しばしば。唐 杜甫 《月》詩之三: “時時開暗室, 故故滿青天。”仇兆鰲 注: “故故, 猶云屢屢。”③わざと。故意。徐鉉《九月三十夜雨寄故人》詩: “別念紛紛起, 寒更故故遲。”
いわれがありそうである。また、趣深くすぐれている。奥ゆかしく気品がある。風格がある。たしなみ深い。
64. ・應眼穿 行楽に向かうはずが、ここの座敷の中に入っていった。だから見たくも無い光景を目の当たりにしたというのがこの詩の意味である。
菩薩蠻七首其六
65. 菩薩蠻七首其の六:(はじめて寵愛を受けて、何不自由なく過ごしす、春の日から、咲くなって悪も暮れる頃も、萵苣の組み合わせが織り込まれているかけ布団、翡翠の上かけ、と寒くない高価な布団に包まれるが、やがて寵愛を失うが、それでも待つことが定めの妃嬪であると詠う)
66. 唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。
菩薩蠻七首 其一
舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。
門外柳花飛,玉郎猶未歸。
愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。
何處是遼陽,錦屏春晝長。
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△●●○○ ●△○●△菩薩蠻七首 其二
柳花飛處鶯聲急,暗街春色香車立。
金鳳小簾開,臉波和恨來。
今宵求夢想,難到青樓上。
贏得一場愁,鴛衾誰並頭。
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菩薩蠻七首 其三
玉釵風動春幡急,交枝紅杏籠煙泣。
樓上望卿卿,䆫寒新雨晴。
薰爐蒙翠被,繡帳鴛鴦睡。
何處有相知,羨他初畫眉。
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菩薩蠻七首 其四
畫屏重疊巫陽翠,楚神尚有行雲意。
朝暮幾般心,向他情漫深。
風流今古隔,虛作瞿塘客。
山月照山花,夢迴燈影斜。
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菩薩蠻七首 其五
風簾鷰舞鶯啼柳,粧臺約鬢低纖手。
釵重髻盤珊,一枝紅牡丹。
門前行樂客,白馬嘶春色。
故故墜金鞭,迴頭應眼穿。
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菩薩蠻七首其六
綠雲鬢上飛金雀,愁眉斂翠春煙薄。
香閣掩芙蓉,畫屏山幾重。
䆫寒天欲曙,猶結同心苣。
啼粉污羅衣,問郎何日歸。
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67. ・この二句 春の季節には男女はとても仲が良かったことを云う
68. 飛金雀 金細工のカンザシにスズメが飛んでいるように細工がしてあるもの。少し動けば揺れる。
69. 愁眉斂翠 翡翠の布団に包まれた様子をいう。
70. ・芙蓉 古くは往々にして蓮(ハス)の花を指した。美女の形容としても多用された表現である。フヨウと区別するために「水芙蓉」とも。ここでははっきりと高閣の中にたくさんの美女がいることを云っている。
71. ・この二句 芙蓉は夏、秋を意味していて、ここまで仲が良かったことを示す。
72. ・この二句 ここでは秋も深まり、夜長を一人さびしく過ごしたいと思っていた波悲しい秋になってしまったことを云っている。でもまた身も心も一体化したいと思っている。
73. ・結同心苣 萵苣の組み合わせが織り込まれているかけ布団の中で結ばれる。 南朝梁沈約《少年新婚為之詠》「錦履并花紋, 繡帶同心苣。」(錦履 并花の紋, 繡帶 同心の苣。)“錦の履に花の紋様が并べてあり, 刺繍の帶には、萵苣の組み合わせが織り込まれている。”(玉台新詠巻五)に基づいている。・苣:①たいまつ。葦を束ねて焼く。《後漢書、皇甫嵩傳》「束苣乘城。」②ちしゃな。苣叚借爲蒙、今俗以爲萵苣字、菜名。
74. ・この二句 閨の着物にきかえて待っているもののその夜も来なかい。しかし、準備をして待つのが定めであると。
菩薩蠻七首其七
75. 菩薩蠻七首その七:(夏の夜、高貴なものの閨で、寝る間を惜しんで愛し合い、うとうととしている間に短い夜は過ぎて、朝の支度の音が聴こえてきたり、熱帯夜であったのであろう、宮女たちが簾の外に打ち水をする、起きてしまうとどうしようと思ってみると、わが君は、眼を開けた微笑みながら驚いて、もっとこのままでいたいといってくると詠う。)
76. 【解説】男と一夜をともにした女の姿態と歓情とを詠う。前段は、寝台の様子と、愛に燃える女性の姿態、そして、外で水を汲む釣瓶の概観の音で目を覚まし、朝の訪れを悲しみながらも、傍らに男のいることを確かめ、男に向かって微笑むさまを描く。最後の女の言葉は、かなり直接的であり官能的である。
77. 【構成】唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。
菩薩蠻七首 其一
舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。
門外柳花飛,玉郎猶未歸。
愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。
何處是遼陽,錦屏春晝長。
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△●●○○ ●△○●△菩薩蠻七首 其二
柳花飛處鶯聲急,暗街春色香車立。
金鳳小簾開,臉波和恨來。
今宵求夢想,難到青樓上。
贏得一場愁,鴛衾誰並頭。
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菩薩蠻七首 其三
玉釵風動春幡急,交枝紅杏籠煙泣。
樓上望卿卿,䆫寒新雨晴。
薰爐蒙翠被,繡帳鴛鴦睡。
何處有相知,羨他初畫眉。
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菩薩蠻七首 其四
畫屏重疊巫陽翠,楚神尚有行雲意。
朝暮幾般心,向他情漫深。
風流今古隔,虛作瞿塘客。
山月照山花,夢迴燈影斜。
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菩薩蠻七首 其五
風簾鷰舞鶯啼柳,粧臺約鬢低纖手。
釵重髻盤珊,一枝紅牡丹。
門前行樂客,白馬嘶春色。
故故墜金鞭,迴頭應眼穿。
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菩薩蠻七首其六
綠雲鬢上飛金雀,愁眉斂翠春煙薄。
香閣掩芙蓉,畫屏山幾重。
䆫寒天欲曙,猶結同心苣。
啼粉污羅衣,問郎何日歸。
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菩薩蠻七首 其七
玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。
簾外轆轤聲,斂眉含笑驚。
柳陰煙漠漠,低鬢蟬釵落。
須作一生拚,盡君今日歡。
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玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。
美しい宮殿の高楼には、寝牀にひんやりとの竹筵の簟がしかれ、鴛鴦の錦がかけられる、白粉は汗に溶けても香しきもので山形状の枕に流れおちる。
78. 氷簟 ひんやりとした竹筵。簟は竹の皮を蒔くはいで編んだ夏用の敷物。氷の上で寝るほどの涼しい簟で編んだしきもの。高級品で庶民の手にするものではない。
鄭羣贈簟 #1 Ⅱ韓退之(韓愈)詩307 紀頌之の漢詩ブログ998
李商隠『可歎』
幸會東城宴末廻、年華憂共水相催。
梁家宅裏秦宮入、趙后樓中赤鳳來。
冰簟且眠金鏤枕、瓊筵不酔玉交杯。
宓妃愁坐芝田館、用盡陳王八斗才。
可歎 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-96
温庭筠『瑤瑟怨』
冰簟銀床夢不成,碧天如水夜雲輕。
雁聲遠過瀟湘去,十二樓中月自明。
79. 駕駕錦 オシドリ模様の錦の掛布。
80. 山枕 枕のこと。山形をした枕で、真ん中が窪み、両端が山の形で高い凹形の枕をいう。温庭筠の更漏子詞に「山枕蹴、錦余寒」、顧鼻の甘州子詞に山枕上、長是怯農鐘」とある。閨情詩の場合の山は女性がベットで横たわることをいい、屏風の山の画とかさなりあうことをれんそうさせ、枕に横たわる裸体の女性を思い浮かべて読んでみると状況がよくわかる。この語を花間集の中で以下のように使用している。
花間集「山枕」の語について | |||
溫庭筠 | 巻一14 | 菩薩蠻十四首其十四 | 山枕隱穠粧,綠檀金鳳凰。 |
溫庭筠 | 巻一17 | 更漏子六首其三 | 山枕膩,錦衾寒,覺來更漏殘。 |
牛嶠 | 巻四10 | 應天長二首其二 | 玉釵橫,山枕膩,寶帳鴛鴦春睡美。 |
牛嶠 | 巻四21 | 菩薩蠻七首其七 | 玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。 |
顧夐 | 巻六43 | 甘州子五首其一 | 山枕上,私語口脂香。 |
顧夐 | 巻六44 | 甘州子五首其二 | 山枕上,幾點淚痕新。 |
顧夐 | 巻六45 | 甘州子五首其三 | 山枕上,長是怯晨鐘。 |
顧夐 | 巻六46 | 甘州子五首其四 | 山枕上,翠鈿鎮眉心。 |
顧夐 | 巻六47 | 甘州子五首其五 | 山枕上,燈背臉波橫。 |
顧夐 | 巻七13 | 酒泉子七首其五 | 雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。 |
顧夐 | 巻七18 | 獻衷心 | 金閨裡,山枕上,始應知。 |
温庭筠『菩薩蠻十三』
竹風輕動庭除冷,珠簾月上玲瓏影。山枕隱濃妝,綠檀金鳳凰。
兩蛾愁黛淺,故國吳宮遠。春恨正關情,畫樓殘點聲。
『菩薩蠻十三』温庭筠 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-13-13-#13 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1668
81. 轆轤 釣瓶井戸の壇櫨。滑車。情事の際の声を云う。「斂眉含笑驚」もエクスタシーを表現するもの。
82. 斂眉 眉をひそめて怪訝な顔をする。
83. 含笑驚 笑いを含んだ顔つきをして驚いているという顔つきの表現。
84. 蟬釵 蝉の飾りの付いた簪。
温庭筠『菩薩蠻 五』
杏花含露團香雪,綠楊陌上多離別。
燈在月朧明,覺來聞曉鶯。
玉鈎褰翠幕,妝淺舊眉薄。
春夢正關情,鏡中蟬鬓輕。
『菩薩蠻 五』温庭筠 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-5-5-#5 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1636
85. 一生拚 一生を捨てる。ここでは我が身がどうなっても構わないことを言う。情事のエクスタシーでいう言葉として理解する。
86. 盡君今日歡 逐語訳すれば、あなたの今日の歓びを尽くしなさい。今日は私を思う存分に愛して下さいということ。こういう表現は、酒を酌み交わす語句として使われるが、実際の生活の中では、閨の言葉として使われていたのであろう。
【字解集】 b.酒泉子
酒泉子一首
1. (去年科挙に及第して、杏園での祝宴に招かれ、妃嬪の美しさを初めて見て以来、女性を見る目、人生観が変ったことを詠う。)
2. 【解説】牛嶠は、878年進士に及第している。合格発表の日は、長安の街全体で祝ってくれ、無礼講であったが、その時、見た妃嬪の美しさに倚り、人生観が変わったということ、そうした経験を思い出してこの詩を作ったものだ。
4. 【解説】『花間集』には牛希濟の作は一首収められている。双調四十三字、前段二十字五句二平韻、後段二十三字五句一平韻、三仄韻で、46③3③/❼❺❼③の詞形をとる。
酒泉子一首
記得去年,煙暖杏園花發。
雪飄香,江艸綠,柳絲長。
鈿車纖手捲簾望,眉學春山樣。
鳳釵低裊翠鬟上,落梅粧。
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韋荘124《巻3-24 酒泉子一首》
月落星沉、樓上美人春睡
綠雲傾、金枕膩、畫屏深。
子規啼破相思夢、曙色東方纔動。
柳煙輕、花露重、思難任
雙調四十一字、前段十九字五句二平韻二仄韻、後段二十二字五句二平韻二仄韻で、④❻3❸③/⑦❻3❸③の詞形をとる。
花間集 『酒泉子一首』
| | | | | |
| 花間集 教坊曲『酒泉子』二十六首 | | |||
| 作者 | 巻 | 題 | 初句7字 | |
| 溫助教庭筠 | 一巻 23 | 酒泉子四首(一) 【改】 | 花映柳條,吹向綠 | |
| 一巻 24 | 日映紗窗,金鴨小 | | ||
| 一巻 25 | 楚女不歸,樓枕小 | | ||
| 一巻 26 | 酒泉子四首(四) 【改】 | 羅帶惹香,猶繫別 | | |
| 韋相莊 | 三巻 24 | 月落星沉、棲上 | | |
| 牛嶠(牛給事嶠) | 四巻 22 | 記得去年,煙暖 | | |
| 張舍人泌 | 四巻 42 | 春雨打䆫,驚夢 | | |
| | 四巻 43 | 紫陌青門,三十 | | |
| 毛文錫(毛司徒文錫) | 巻五 | 綠樹春深,鷰語 | | |
| 牛學士希濟 | 巻五 | 枕轉簟涼,清曉 | | |
| 顧敻(顧太尉敻) | 巻七 | 楊柳舞風,輕惹 | | |
| 巻七 | 羅帶縷金,蘭麝 | | ||
| 巻七 | 小檻日斜,風度 | | ||
| 巻七 | 黛薄紅深,約掠 | | ||
| 巻七 | 掩卻菱花,收拾 | | ||
| 巻七 | 水碧風清,入檻 | | ||
| 巻七 | 黛怨紅羞,掩映 | | ||
| 孫少監光憲 | 巻八 | 空磧無邊,萬里 | | |
| 巻八 | 曲檻小樓,正是 | | ||
| 巻八 | 斂態䆫前,裊裊 | | ||
| 毛秘書熙震 | 巻十 | 閑臥繡幃 | | |
| 巻十 | 鈿匣舞鸞 | | ||
| 李秀才珣 | 巻十 | 寂寞青樓,風觸 | | |
| 巻十 | 雨清花零,紅散 | | ||
| 巻十 | 秋雨聯綿,聲散 | | ||
| 巻十 | 秋月嬋娟,皎潔 | | ||
| | | *は旧解版 | | |
| | | | | |
記得去年,煙暖杏園花發。
忘れることのできない去年の及第の発表は鮮明な記憶として残っている、その日は、春霞に暖かな日、祝宴の開かれる曲江の杏園には杏花が咲き誇っていた。
5. ・杏園 長安の曲江の池の畔(ほとり)にあった杏園で、祝宴を賜り、長安の街を園遊し、咲き誇る牡丹などの花を観賞する慣わしがあった。また、貴族は自邸自慢のボタンを庭を開放して鑑賞させ、合格者の無礼を許した。
・杏園:官吏登用試験(科挙)に合格した進士たちの祝宴会場。科挙に合格した進士には、曲江の池の畔(ほとり)の杏園で、祝宴を賜り、長安の街で園遊し、咲き誇る牡丹などの花を観賞する慣わしがあった。 貴族の庭園は無礼講で開放。
・杏園人:科挙に合格し、新たに進士となった人たちを指す。
『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-46韋荘124《巻3-24 酒泉子一首》三巻24-〈124〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5822
6. ・雪飄香 雪のような白い杏の花が、風に漂わせて散ってゆくこと。
7. ・江艸綠 春になって曲江のほとり杏園に花々草木が繁り咲き誇ることを言う。
8. ・鈿車 青貝細工を施した美しい乗り物、輦車。
9. ・纖手 優しい女官、宮妓の手。
10. ・眉學春山樣 その女の眉は春の山の姿に倣って書かれている。
11. ・鳳釵 鳳凰のかんざし。
12. ・低裊 簪が低くしなやかに揺らめいている。
13. ・翠鬟上 若いみどりの黒髪のもとどりの上。
14. ・落梅粧 宋の武帝のむすめの寿陽公主が梅の木のしたで眠っていたら梅の花びらが額についてとれなくなった。以来、梅花粧として宮人が好んでこれを化粧に取り入れた。梅花妝 梅花 五出の花蕊粉新妝 額點梅花。《初學記》「宋武帝、壽陽公主主人日臥于含章簷下,梅花落公主額上,成五出之花,拂之不去。皇后留之,自後有梅花粧。(據《事類賦》卷二十六「壽陽之妝更新」注引)
李商隱《對雪》詩之二「侵夜可能爭桂魄, 忍寒應欲試梅粧。」とある。
韋莊『春愁』
其一:
寓思本多傷,逢春恨更長。
露沾湘竹淚,花堕越梅妝。
睡怯交加夢,閑傾瀲灩觴。
後庭人不到,斜月上松篁。
其二:
自有春愁正斷魂,不堪芳草思王孫。
落花寂寂黄昏雨,深院無人獨倚門。
落花梅
楽府。横笛曲辭。宋の鮑照、梁の呉均、また、唐の大角曲にも大梅花、小梅花の曲名がある。
<科挙合格の詩>
『喜遷鶯二首其一』、『題酒家』「酒綠花紅客愛詩,落花春岸酒家旗。尋思避世爲逋客,不醉長醒也是癡。」題酒家 韋荘 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-278-5-#32 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2937
韋莊 長安春
長安二月多香塵、六街車馬聲鈴凛。
家家楼上如花人、千枝萬枝紅艶新。
簾間笑語自相問、何人占得長安春。』
長安春色本無主、古来盡屬紅樓女。
如今無奈杏園人、駿馬輕車擁将去。』
長安春 韋荘 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-269-5-#23 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2892
薛昭蘊 喜遷鶯三首 其二
金門曉,玉京春,駿馬驟輕塵。
樺煙深處白衫新,認得化龍身。
九陌喧,千戶啓,滿袖桂香風細。
杏園歡宴曲江濱,自此占芳辰。
9 17 喜遷鶯三首 其二 (薛昭蘊)薛侍郎昭蘊ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-394-9-#17 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3517
またの名を《早梅芳》、《春光好》、《烘春桃李》、《喜遷鶯令》、《萬年枝》、《燕歸來》、《鶴沖天》、《鶴冲霽》、《燕帰梁》、などという。「花間集」には韋荘の詩二首収められている。双調四十七字、前段二十三字五句五平韻、後段二十四字五句二仄韻二平韻で、③③⑤⑦⑤/3❸❻⑦⑤の詞形をとっている。
喜遷鶯三首 其一
(女、女妓の一生を詠う。)
殘蟾落,曉鐘鳴,羽化覺身輕。
乍無春睡有餘酲,杏苑雪初晴。
紫陌長,襟袖冷,不是人間風景。
迴看塵土似前生,休羨谷中鶯。
名残の月も沈んで、暁の仕事始めの鐘が打ち鳴らされ、酔いはのこったまま、その身はまだ夢見心地なのだ。
たちまちのうちにうとうとともできない二日酔いのようである。杏の中庭の庭園には雪のように花が咲いてお天気も晴れてきた。
都大路は花が咲き長く続く、おんなの襟や袖は涙にぬれて冷たい、これは女の本筋ではなかったのだがこれが人の世の風景というものなのだ。
この人の世の塵の様なものまで見まわしてみると結局、前の年も、その前も、そして、自分たちの前世も似たようなものなのである。春を告げる鶯の声を羨むことをやめたのだろう谷の奥の方に行ってしまった。
其二
金門曉,玉京春,駿馬驟輕塵。
樺煙深處白衫新,認得化龍身。
九陌喧,千戶啓,滿袖桂香風細。
杏園歡宴曲江濱,自此占芳辰。
其三
清明節,雨晴天,得意正當年。
馬驕泥軟錦連乾,香袖半籠鞭。
花色融,人競賞,盡是繡鞍朱鞅。
日斜無計更留連,歸路艸和煙。
牛嶠(生卒年不詳),字を松卿といい,また延峰ともいった。隴西(今の甘肅省西部)の人,唐の宰相、牛僧孺の孫である。唐の僖宗、878年乾符元年の進士,拾遺,補尚書郎を歷任した。王建が蜀の鎮守になると,牛嶠は判官に任じられ、王建が建国して帝を称えると給事中等職に任じられ,故に後の人は “牛給事”と稱した。牛嶠博學、文才有り,詩は李賀に學んだ,尤も其の詞を以って世に聞く,現在《歌詩集》三捲あったことは知られているが今日うしなわれていて傳わらない。花間集に三十二首収められている。
【字解集】 c.定西番
定西番
1.(西域辺境守備・万里長城の兵士の望郷の念をそうぞうして詠う、宮廷で歌われたこの教坊曲である。)
2.【解説】国境の守備の実体験のないものが想像して詠う辺塞詩の内容である。西域辺境守備・万里長城の兵士の望郷の念を詠う。後段は、夢の覚めた後、空の果てなる故郷の方を望めば、既に夜明け間近で、星影も薄れて、角笛の音が咽び泣くように響き、大地は一面の雪に覆われていると、辺境の明け方の荒涼とした景色を描写する。唐教坊曲名。唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。
『定西番』は宮廷で歌われたこの教坊曲である。
3. 【構成】 『花間集』 には牛嶠の作が一首収められている。双調三十五字、前段十五字四句二平韻、後段二十字四句二灰韻二平韻で、63③③/❻⑤❻❸の詞形をとる。
定西番
紫塞月明千里 金甲冷 戍樓寒 夢長安
鄉思望中天闊 漏殘星亦殘
畫角數聲嗚咽 雪漫漫
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4. 紫塞 紫色の土で築いた砦。詩詞では万里の長城をさす。雁門草の色が紫であったため万里の長城をいう。
5. 金甲 金属製の鎧。
6. 戊楼 物見櫓。
7. 郷思望中天闊 故郷を偲んで望むと空は果てしなく広がる。
8. 漏残 ここでは夜が尽きかけることを言う。漏は水時計。残は損なわれる、さびれることであるが、満天の星空に対して空がしらじらしてきた様子を云う。物見やぐらでの見張りで夜通し起きている様子を云う。
9. 画角 陣営などで合図のために吹き鳴らす胡笳の角笛のラッパの類。・羌笛 青海地方にいた西方異民族(チベツト系)の吹く笛。ここでは万里の長城の国境守備隊の角笛を聞くこと。
『清溪半夜聞笛』李白
羌笛梅花引、吳溪隴水情。
寒山秋浦月、腸斷玉關聲。
李白70清溪半夜聞笛 71秋浦歌十七首 其二 72清溪行 73 宿清溪主人
韋荘「江城子二首 其二」「更漏子」の「角聲」「角笛」 の注参照。
温庭筠『定西番 一』
漢使昔年離別,攀弱柳,折寒梅,上高台。
千裏玉關春雪,雁來人不來。
羌笛一聲愁絕,月徘徊。
『定西番三首(一)』温庭筠 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-27-4-#5 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1724
韋荘『江城子二首』其二
髻鬟狼藉黛眉長,出蘭房,別檀郎。
角聲嗚咽,星斗漸微茫。
露冷月殘人未起,留不住,淚千行。
104 江城子 其二 韋荘 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-296-5-#50 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3027
上川主武元衡相國 其二
東閣移尊綺席陳,貂簪龍節更宜春。
軍城畫角三聲歇,云幕初垂紅燭新。
上川主武元衡相國二首 其二 薛濤 唐五代詞・宋詩 薛濤-203-69-#63 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2562
10. 雪漫漫 見わたす限り一面の雪。・漫漫:①《楚辞、離騒》「路漫漫其修遠兮 吾将上下而求索」(路は漫々として其れ修遠なり 吾れ将に上下して求め索ねんとす。」②夜の長いさま。楚辞、悲回風 終夜之漫漫兮
③広く遙かなさま。際崖のないさま。《文選‧揚雄<甘泉賦>》: “正瀏濫以弘惝兮, 指東西之漫漫。④雲の棚引くさま。尚書《大傳夏傳》卿雲歌:「卿雲爛兮,糺縵縵兮。」
【字解集】 d.玉樓春
玉樓春一首
1. (後宮には寵愛を一手に受けていてもやがて失って、窓辺で涙を落とし、長い歴史でその床を穿つほど繰り返された、そして、杜秋娘のように誰も振り向いてくれずないのか、回文錦字詩を作っても意味がなくなって辞めてしまうものだと詠う。)
2. 【構成】『花間集』には七首所収。顧夏の作は四首収められている。双調五十六字、前段二十八字四句三仄韻、後段二十八字四句二仄韻で、❼❼7❼/7❼7❼の詞形をとる。
《玉樓春》
春入橫塘搖淺浪,花落小園空惆悵。
此情誰信為狂夫,恨翠愁紅流枕上。
小玉䆫前嗔鷰語,紅淚滴穿金線縷。
鴈歸不見報郎歸,織成錦字封過與。
○●△○○△△ ○●●○△○●
●○○△○△○ ●●○○○△●
●●?○○●● ○●●△○●●
●○△●●○○ ●○●●△△△
3.・橫塘 池の堤がよこたえる。
4.・小園 小さい花園。庾信《小園賦》「桐閒露落、柳下風来」
5.・惆悵 恨み嘆くこと。恨み嘆くさま。
6.・狂夫 ①気の狂った男。②夫人が自分の夫を指して言う。③流星の夜ばい星。④風雅に徹した人。
7.・瞋【いかる】. 怒って目をかっと見はる。相手をにらみつける。【瞋恚】しんい. 自分の心に反するものを怒り恨むこと。仏教の三毒・十悪の一つ。怒り・憎しみ・怨みなどの憎悪の感情。怒り恨むこと。腹立ち。怒り。
8.・金線縷 ・金線:①金絲をいう。②花の名。③柳の枝の形容。 楽府としている。の扱いであるが、絶句に近い。正格の絶句ではない。平仄を参照。この作品は、詞の扱いで金縷曲、金縷衣というものの、詞牌の「金縷曲」「金縷衣」とは違う。
杜秋娘『金縷衣』「勧君莫惜金縷衣、勧君須惜少年時。花開堪折直須折、莫待無花空折枝。」
(君に勧む 惜しむ莫れ 金縷の衣、君に勧む 須らく惜しむべし 少年の時。花開いて折るに堪えなば 直ちに須らく折るべし、花無きを待って 空しく枝を折る 莫れ。)
杜秋娘については、杜牧に『杜秋娘の詩』という長い詩がある。宮人の杜秋は穆宗の時、皇子の保母であった。この皇子が讒言によって罪に落されたので、彼女も巻き添えになって故郷に追い返された。年を取って飢えと寒さがこもごも加わり、また孤独で頼るところがなかった。杜牧などの名士が気の毒に思い、有名な「杜秋娘の詩」を作って彼女の哀れな運命を悼んだ。
9. 織成錦字 錦にその字句を織り込んで、一本を夫のもとに送り、一本を役人に献上した「回文錦字詩」の故事のように織りこんだもの。李白《秋浦寄內詩》「有客自梁苑、手攜五色魚。開魚得錦字、歸問我何如?」(客あり梁苑よりし、手に五色の魚を携(たづさ) ふ。魚を開きて錦字を得るに、帰ってわがいかん を問う。)“梁園の方から訪ねてくれた客があった、手に携えてきてくれた錦織の五色の短冊があった。短冊の封を切ると錦織の文字が現われたのだ、いかがですか、いつお帰りになるのですかとわたしへの労わりの問いがあったのだ。”
「回文錦字詩」の故事
匈奴の侵略に対し、辺地に兵士を送って、北辺を守った。長年帰って来ない夫に故郷に残る妻は、その夫に対する情を一章の詩に作り、手ずから錦にその字句を織り込んで、一本を夫のもとに送り、一本を役人に献上した。この話は時の帝の耳に入り、夫は無事帰されたという。帝を感激させたこの故事は、織錦回文詩や回文錦時詩などと呼ばれて、後世の詩人たちにも詠まれるようになった。
【字解集】 e.西溪子
西溪子
1. (後宮に入るには一族の浮沈を掛けてはいるもので、寵愛を受ける期間が出来るだけ長いこと、子供が出来なければ、その地位は危うい。それでも寵愛を待ち続ける外ないということを詠う)
2. 【解説】唐代の皇帝たちは、後宮の女性を選抜したり寵愛したりするのに、あまり尊卑貴賎を気にかけなかったが、彼女たちに地位・品級を賜る時には家柄をたいへん重視した。とりわけ皇后に立てる時には絶対に家柄が高貴でなければならず、「天下の名族を厳選」しなければならなかった(『資治通鑑』巻一九九、高宗永徴六年)。漢代に歌妓の衛子夫(武帝の皇后。もと武帝の姉の歌妓)や舞妓の超飛燕(成帝の皇后。もと身なし児で歌妓)が皇后になったようなことは、唐代には完全に跡を絶った。后妃に封ずる時は、まず「地肖清華」(家柄の高貴)、「軒冤之族」(貴顕なる名族)等々の出身であることが強調され、その次にやっと徳行が問われた。
唐代の記録にある二十六人の皇后の内、死後追贈された人、あるいは息子の即位によって尊ばれて太后に封ぜられた人、こうした若干の例外を除く他の大多数の皇后は、その時代の高官か名門の家柄の出であり、そのうちの八人はやはり皇族の出身であった。時に皇帝が家柄などにそう拘泥しないこともあったが、しかし大臣たちが家柄を最も有力な理由にして反対したので、皇帝でさえどうすることもできなかった。
3. 【構成】『花間集』には三首所収され、牛嶠の作が一首収められている。双調三十五字、前段十五字四句二平韻、後段二十字四句二灰韻二平韻で、❻❻/3③③6❸❸の詞形をとる。
西溪子
捍撥雙盤金鳳,蟬鬢玉釵搖動。
畫堂前,人不語,弦解語。
彈到昭君怨處,翠蛾愁,不迴頭。
●●○○○● ○●●○○●
●○○ ○△● ○●●
△●○○△● ●△○ △△○
4. ・捍撥【かんぱち】 琵琶や阮咸(げんかん)などの楽器を捍撥という。すなわち撥のあたる皮張りの表面に濃彩画があるもの。
5. ・雙盤 雙六盤、盤双六(ばんすごろく)と後世に発生して単に「双六」と称した絵双六(えすごろく)の2種類があった。雙陸:双六の一種で、賭博をした。
『唐六典』 の内官制度の規定によると、后妃たちにも職務が決められていた。妃嬪は皇后を補佐し、「坐して婦礼を論じ」、「内廷に在って万事を統御する」、六儀(後宮にある六つの官庁)は「九御(天子に奉侍する女官たち)に四徳(婦徳・婦言・婦容・婦功)を教え、傘下の婦人を率いて皇后の儀礼を讃え導く」、美人は「女官を率いて祭礼接客の事を修める」、才人は「宴会、寝所の世話を司り、糸枲のことを理め、その年の収穫を帝に献じる」等々。しかしながら、これらの仕事も大半は形式的なもので、なんら実際の労働ではなかった。形式的な「公職」以外で、彼女たちの生活の最も重要なことは、言うまでもなく皇帝の側に侍り、外出の御供をすることであった。彼女たち自身の私的な生活はと言えば、ただいろいろな娯楽、遊戯を思いついては日時をすごし、いかにして孤独と退屈をまざらわすかということに尽きる。「内庭の嬪妃は毎年春になると、宮中に三人、五人と集まり、戯れに金銭を投げ表裏を当てて遊んだ。これは孤独と苦悶の憂さを晴らすためであった」、「毎年秋になると、宮中の妃妾たちは、美しい金製の小龍に蟋蟀を捉えて閉じ込め、夜枕辺に置いて、その鳴き声を聴いた」(王仁裕『開元天宝遺事』巻上)。これらが彼女たちの優閑無聊の生活と娯楽や気晴らしのちょっとした描写である。
〔唐書,狄仁傑傳〕后召謂曰,朕數夢雙陸不勝何也,於是仁傑與王方慶俱在,二人同辭,對曰,雙陸不勝,無子也,天其意者,以儆陛下乎。
5. ・昭君怨 王昭君の詠った詩題、ここでは筝曲であり、王昭君:前漢の元帝の宮女。竟寧元年(紀元前33年)、匈奴との和親のため、呼韓邪単于に嫁し、「寧胡閼氏」としてその地で没した。名は檣。ともするが、『漢書・元帝紀』では前者「檣」。昭君は字。明君、明妃は、「昭」字をさけたための晋以降の称。
6. ・翠蛾 みどりの眉。蛾は峨眉。
翡翠は鳥の雄の「赤」を表わし”翠”は雌の「緑」を表わしているが、ここに言う翠はメス、女、蛾は嫦娥も一人で過ごす女。嫦娥 神話中の女性。神話の英雄、羿(がい)が西方極遠の地に存在する理想国西王母の国の仙女にお願いしてもらった不死の霊薬を、その妻の嫦娥がぬすみ飲み、急に身軽くなって月世界まで飛びあがり月姫となった。漢の劉安の「淮南子」覧冥訓に登場する。なお、魯迅(1881-l936)にこの神話を小説化した「羿月」がいげつと題する小説がある。
李白 把酒問月
把酒問月、故人賈淳令余問之。
靑天有月來幾時,我今停杯一問之。
人攀明月不可得,月行卻與人相隨。
皎如飛鏡臨丹闕,綠煙滅盡淸輝發。
但見宵從海上來,寧知曉向雲閒沒。
白兔搗藥秋復春,嫦娥孤棲與誰鄰。
今人不見古時月,今月曾經照古人。
古人今人若流水,共看明月皆如此。
唯願當歌對酒時,月光長照金樽裏。
李商隠『嫦娥』
雲母屏風燭影深、長河漸落暁星沈。
嫦娥應悔倫塞薬、碧海青天夜夜心。
李商隠 『嫦娥』 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集約130首 詩の背景1.道教 2.芸妓 3.嫦娥と李商隠
和凝《巻六30柳枝三首其一》
軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。
青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。
12 -17 柳枝三首 其一 和學士凝(和凝【わぎょう】)二十首ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-444-12-#17 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3767
和凝《巻六32柳枝三首其三》
鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。
不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。
12 -19 柳枝三首 其三 和學士凝(和凝【わぎょう】)二十首ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-446-12-#19 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3777
【字解集】 f.江城子二首
江城子二首 其一
1. (睦まじかった鷺も江南に飛び立って戻ってこない、その江南の越王には浮草があつまりの宮殿大江のほとりの高楼の女を詠う。)
2. 【解説】またの名を江神子、春意遠、水晶簾と言う。「花間集』 には韋荘の作は二首収められている。
女が愛する男と床をともにするさまを詠う。ここには差恥に顔を赤らめるような初心な女の姿は全く見られず、積極的で、愛一途に生きる女の姿が描かれている。
103 江城子 其一 韋荘 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-295-5-#49 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3022
江城子二首 其一
恩重嬌多情易傷,漏更長,解鴛鴦。
朱唇未動,先覺口脂香。
緩揭繡衾抽皓腕,移鳳枕,枕潘郎。
104 江城子 其二 韋荘 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-296-5-#50 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3027
江城子二首 其二
髻鬟狼藉黛眉長,出蘭房,別檀郎。
角聲嗚咽,星斗漸微茫。
露冷月殘人未起,留不住,淚千行。
『花間集』には七首所収。牛嶠二首、韋荘の作二首(掲載済み)が二首収められ、張泌、欧陽炯らも所収されている。単調二十七字、八句五平韻 7③③/4⑤/73③の詞形をとる。
江城子二首 其一
鵁鶄飛起郡城東,碧江空,半灘風。
越王宮殿,蘋葉藕花中。
簾捲水樓魚浪起,千片雪,雨濛濛。
○○○●●○○ ●○△ ●△△
●△○● ○●●○△
○△●○○△● ○●● ●△△
3. ・鵁鶄 ごいさぎ. 水鳥の一種。即ち「池鷺」。頭は細く身は長い,身には花紋を披い,頸は白毛で有り,頭には紅冠が有り,能く水に入って魚を捕り,分佈は中國南方である。鳬に似て脚高く毛冠あり、高木に巣くひ、子を穴中に生む。子其の母の翅を銜へ飛びて上下す。
*この三句は、鷺のように仲睦まじく過ごしたのに、鷺のように南に飛んで行ってしまった。船で降ったあの人の旅路は航路困難な場所があってとても心配だということをいう。唐韓愈孟郊《城南聯句》: “將身親魍魅,浮跡侶鷗鶄。
4. ・郡城 ここは、長江三峡の上流の郡城。東に向かって流れる長江、ゴイサギも長江下流域江南へ飛んでゆく。
5. ・碧江空 大江と天空は碧く一体化している
6. ・半灘風 なかば航海が困難な急流があり風がある。
7. ・越王宮殿 越王勾践が宮殿を焼いたことなど。《韓非子》越王句踐見怒蛙而式之,御者曰:「何為式?」王曰:「蛙有氣如此,可無為式乎?」士人聞之曰:「蛙有氣,王猶為式,況士人之有勇者乎!」是歲人有自剄死以其頭獻者。故越王將復吳而試其教,燔臺而鼓之,使民赴火者,賞在火也,臨江而鼓之,使人赴水者,賞在水也,臨戰而使人絕頭刳腹而無顧心者,賞在兵也,又況據法而進賢,其功甚此矣。
越王の句踐は怒蛙 (威嚇して力む蛙)を見て、これに敬礼をした。御者は聞いた「どうして敬礼するのですか?」王は答えた「蛙はこのように勇気がある。そのために、敬礼しないでいいだろうか?(そうするべきだ)」士人は、これを聞いて言った「蛙に勇気があると,王は蛙にさえ、そのために敬礼なさった。まして士人の勇者であれば、猶更だろう!」この年、自剄(自分で首を切る)して死に、その頭を獻上する者があった。そこで越王は吳に復讐しようとしてその人民の教化(の程度)を試そうとした。楼台(宮殿)を焼いて鼓を打ち,民を火中に赴かせ、火中にはいれば賞を与えた。長江に臨んで鼓を打ち,人を水中に赴かせ,水中に入れば賞を与えた。戰に臨んで、人が頭を切られ腹をえぐられても顧みる心を持たなかったのは,戦の中に入れば賞があったからだ。また、まして法に拠って賢人を推挙するなら,その功績は此れ (火中、水中、戦の中)より甚しいこと猶更のことである。
(改訂版)-4.薛昭蘊133《巻三36浣溪紗八首 其七》
浣溪沙八首其七
傾國傾城恨有餘,幾多紅涙泣姑蘇,倚風凝睇雪肌膚。
呉主山河空落日,越王宮殿半平蕪,藕花菱蔓滿重湖。
『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-4.薛昭蘊133《巻三36浣溪紗八首 其七》巻三3633-〈133〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5867
8. ・蘋葉 浮草の一種で柏餅の葉のように使う。
・藕 レンコン (レンコンはちぎっても糸がつながっている>)(男女が)別れたのになお関係を断ち切れずにいる.藕粉 レンコンの澱粉.
⋆この二句は仲睦まじくしていたころのことをいう。別れてもなお関係を断ち切れずにいることをいう。
9. ・魚浪起 波の間に魚が躍っているさま。
千片雪 花びらがたくさん散って雪が積もったようだというさま。
10. ・雨濛濛 春の長雨でもうもうとした雨霧の中、流れているさま。
⋆春水の増水のころになっても帰ってこない。そんな大江のほとりの女のいる高楼の有様を云う。
江城子二首 其二
12. (はるかに長い浦辺に別離旅立ちのときがくる、船着き場の抒情を詠う。)
13.【解説】荒れる川面も、糸のように降る雨も実景であると同時に、人を見送った後の心の中の風景でもある。また岸辺の芳草も旅立った人の帰りの遅くなることを暗に予期させる。
13.