花間集 訳注解説 巻一 (20)回目温庭筠 《菩薩蠻十四首 【字解集】》 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7682

 菩薩蠻十四首 【字解集】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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花間集 訳注解説 巻一 (20)回目温庭筠 《菩薩蠻十四首 【字解集】》 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7682

 

温庭筠 《菩薩蠻十四首》【字解集】

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1.【解説】 寵愛を失ったもののまだ若い妃嬪の朝化粧を描いたもの。126人もいる妃嬪に一回の子作りのチャンスは与えられればまだよいほうで、一度の寵愛の機会もないものもいた。

杜甫はかつて《観公孫大娘弟子舞剣器行井序》「先帝の侍女八千人」(「公孫大娘が弟子の剣器を舞うを観る行」)と詠い、白居易もまた《長恨歌》」「後宮の佳麗三千人」と言った。これらは決して詩人の誇張ではなく、唐代の宮廷女性は、実際はこの数字をはるかに越えていた。唐の太宗の時、李百薬は上奏して「無用の宮人は、ややもすれば数万に達する」(『全唐文』巻一四二、李百薬「宮人を放つを請うの封事」)といった。『新唐書』の「官者伝」上に、「開元、天宝中、宮嬪はおおよそ四万に至る」と記されている。後者は唐代の宮廷女性の人数に関する最高の具体的な数字であり、まさに盛唐の風流天子玄宗皇帝時代のものである。宋代の人洪邁は、この時期は漢代以来、帝王の妃妾の数が最も多かった時代であるといっている(『容斎五筆』巻三「開元宮嬪」)。うまい具合に、この時期の女性の総人口は先に紹介した数字 - およそ二千六百余万であるから、四万余人とすれば、じつに全女性人口の六百分の一を占める。つまり、女性六百人ごとに一人が宮廷に入ったことになる。唐末になり、国土は荒れ、国勢は衰えたが、いぜんとして「六宮(後宮)の貴・賤の女性は一万人を減らない」(『資治通鑑』巻二七三、後唐の荘宗同光三年)という状態だった。この驚くべき数字の陰で、どのくらい多くの「曠夫怨女」(男やもめと未婚の老女)を造り出したことか計り知れない。唐末の詩人曹鄴が慨嘆して「天子 美女を好み、夫婦 双を成さず」(「捕漁謡」)と詠ったのも怪しむに足りない

2. 花間集のトップに掲載。
・温庭:晩唐の大詞人。詩人でもある。花間集では彼の作品が一番多く、六十六首も採用されており、このことから花間鼻祖とも称されている。

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

小山重疊金明,鬢雲欲度香顋
懶起畫蛾
。弄妝梳洗
照花前後
。花面交相
新帖繡羅
。雙雙金鷓

●○△●○○●  ●○●●○○●

●●●△○  ●○○●○

●○○●●  ○●○△●

○●●○○  ○○○●○

3. 小山 屏風。小さな屏山、つまり屏風。後の句が、髪のことを云っているのだから、髷の形容である。唐代の女性の風俗である小山眉と小山の髪型が重なり合っている。その前の寝姿を小山ということも重なり合っている。寝ている女性の小さな山となっている。ここは屏風に描かれた山々が遠くの連峰で、手前に妃嬪の横たわった寝姿が一つの柄に苗う様子を「小山重疊」と表現したもの。
4.
 重疊 幾重にも重なり合う。前の語の小山が屏風と見れば、幾重にも折れ曲がっている屏風のことである。
羅隱の『江南行』に「江煙雨蛟軟,漠漠小山眉黛淺。水國多愁又有情,夜槽壓酒銀船滿。細絲搖柳凝曉空,呉王臺春夢中。鴛鴦喚不起,平鋪綠水眠東風。西陵路邊月悄悄,油碧輕車蘇小小。」とある。
5.
 金明滅 明滅は、きらきら、ぴかぴかとしている様子。朝が来て日が差し込んできて、金が陽光に倚り輝く様子であろう。艶めかしさをクローズアップさせる表現である。
6.
 鬢雲 豊かな鬢、横の方に生えている髪。女性の豊かな髪の毛により、妖艶な雰囲気を出している。
7.
 欲度 雲が流れて来、懸かろうとしている。寝乱れた髪が懸かってきていること。
8.
 香顋 香しい女性のおとがい。香は、女性を暗示する語。顋は、あご。おとがい。
9.
 雪 ゆき。女性の肌の白さ。

10. 懶起 けだるさの表現。ものうく起きる。物憂げにおきる。この表現で前日の性交の激しさを想像させる。
11.
 畫 かく。えがく。文字以外のものをかくこと。ここでは黛で眉を画いていること。
12.
 蛾眉 蛾の触覚のように、すんなりと伸びた女性の美しい眉の比喩。
13.
 弄妝 妝=粧。化粧をする。
14.
 梳洗 髪を梳り、顔を洗う。化粧をする。梳沐。
15.
 遲 おそい。動きがゆっくりとしていること。この時代の男は夜明け前にはいない。一人でいることを表現することでエロチックなことを想像させる。

16. 照花 花は美しい女性の顔。照は「鏡に映す」という動詞。
17.
 前後鏡 合わせ鏡。
18.
 花面 花のように美しい女性の顔。
19.
 交相映 花面を美しい女性の顔が、前後の合わせ鏡にこもごも あい 映っている


新帖繡羅襦。雙雙金鷓鴣。
季節が変わって新しく閨に張る薄いとばりがあり、鏡の所から立ち上がって、刺繍のうすぎぬの襦袢も新しく肌に合わせてみる。一ツガイずつ向かい合わせになった金の鷓鴣の紋様がぬいとりされている。
20.  閨に張る薄いとばり。
21.
  ぬいとる。ぬいとり。
22.
 羅襦  うすぎぬの着物。羅は、うすぎぬ。襦は、肌着。縫い取りのある肌着は痛くて心地悪いが見せる肌着を云う。頽廃を想像させる表現である。
23.
 雙雙 つがいに揃った様子をいう。そのようなのがいくつもあるときの表現。つがいになった鳥が、あちらこちらにいる様子。
24.
 鷓鴣 鳥の名。しゃこ。キジ科の鳥。ここでは、雙雙鷓鴣で、男女一緒になることを暗示しており、詞ぜんたいでは、懶起畫蛾眉でも暗示されるように、そのことが、叶わなくて、一人でいる女性の艶めいた寂しさを詠っている。

木蓮00125. 温庭筠 おんていいん
⑴(812頃―870以後)本名は岐、字は飛卿、幷州(山西省大原)の人。初唐の宰相温彦博の子孫にあたるといわれる。年少のころから詩をよくしたが、素行がわるく頽廃遊蕩生活に耽り、歌樓妓館のところに出入して、艶麗な歌曲ばかりつくっていた。進士の試験にも落第をつづけ、官途につくこともできなかった。徐商が裏陽(湖北)の地方長官をしていたとき、採用されて巡官となり、ついで徐商が中央の高官(成通のはじめ尚書省に入る)になったので、さらに任用されようとしたが成らなかった。859年頃に詩名によって特に召されて登用され、国子(大学)助教となった。たが、叙任前に微行中の宣宗に無礼があって罷免され、晩年は流落して終わった。そのため、生歿が未詳である。

集に撞蘭集三巻、金墨集十巻、漢南其稿十巻があったという。かれは晩唐の詩人として李商隠と相並び、「温李」として名を知られている。音楽に精しく、鼓琴吹笛などを善くし、当時流行しつつあった詞の作家としても韋荘と相並んで「温韋」の称があった。その詞の大部分は超崇祚の編した花間集に収載されている。洗練された綺麗な辞句をもちいた、桃李の花を見るような艶美な作風は花間集一派の詞人を代表するもので、「深美閎約」と批評されているその印象的なうつくしさにおいてほ花間集中、及ぶものがないといってよく、韋荘の綺麗さとよい対照をなしている。王国維が花間集に収載する六十六首のほか他書に散見するものを合せて輯した金荃詞一巻があり、七十首を伝えている。

26. 菩薩蠻十四首其二 【題意】 寵愛を失ったものの、化粧を落として床に入る姿は、若くて美しい妃嬪である。まだ若い妃嬪が夜を過ごすのを描いたもの。126人もいる妃嬪に一回の子作りのチャンスは与えられればまだよいほうで、一度の寵愛の機会もないものもいた。

・温庭:晩唐の大詞人。詩人でもある。花間集では彼の作品が一番多く、六十六首も採用されており、このことから花間鼻祖とも称されている。

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

夜來皓月才當午,重簾悄悄無人語。
深處麝煙長,臥時留薄妝。
當年還自惜,往事那堪憶。
花露月明殘,錦衾知曉寒。

●△●●○△●  △○●●○○●

△●●○△  ●○△●○

△○○●●  ●●△○●

○●●○○  ●○○●○


27. 夜来皓月 夜中にでていたまっしろな月。来は語助詞。夜来は「夜来風雨声・花落知多少」のように昨夜からの時間的経過をもったことば。
28.
 才 いまちょうど。
29.
 皓月才當午 あかるくさえわたった月がちょうど天の中心に来たこと。
30.
 重簾 幾重にも垂れるすだれの内。妃嬪の御殿の様子。
31.
 悄悄 ひっそりとさびしいさま。ひっそりとしずまりかえること。

32. 麝煙 爵香のけぶり。麝の腹部の靡番線にある香嚢から取った香料で、芳香はきわめて強い。

33. 臥時留薄妝 化粧を落としても化粧をしているかのように美しいということ。

34. 当年 寵愛を受け、愛し合う時は、寸暇を惜しんで尽くした、去ってゆく時を惜しむように愛し合う月日をすごしたことをいう。
35.
 那堪 このような思いにどうして堪えられようか。今夜も若い女の人のところにいっている、ということ。

36. 花露月明殘 この句は、花にはまだ蜜が残っており、月もまだ真上にあるように、まだ女の盛りにあるということで、一槽に淋しさを強調する。名残月と解釈していたが間違い。

37. 錦衾 にしきのふすま。身体をおおう夜具、薄絹のかけ布。性交渉のためには薄い者しかかけない。
38.
 曉寒 一人寝のさむさ。薄いかけ布でも二人で添い寝をしておれば寒くはなかった。

39.菩薩蠻十四首其三【解説】 春は寵愛する妃嬪の変わり時である。牡丹の花咲く時節、恋を得た女の喜びも束の間に終わってしまった悲しみを詠う。

蕊黃無限當山,宿妝隱笑紗窗
相見牡丹
,暫來還別
金作上蝶雙
心事竟誰
?月明花滿

菩薩蠻十四首其三は唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

●○○●△○●  ●○●●○○●

△●●○○  ●△○●△

●?○●●  ?●●○●

○●●○○●○○●○

 

40. 蕊黄無限 蕊黄は額に塗る黄色の化粧品。もと黄色い花粉を用いたところからこの名がついた。額黄とも言う。無限はこよなく素晴らしいこと。

・蕊黃無限 蕊黃は女の額にほどこす黄色の化粧法。額黄ともいい、古く漢代からあったが、六朝時代に始まる女性の化粧法で、唐末五代には黄色のみならず、「花鈿」「花子」に碧色や朱色、あるいは金の薄板なども用いられ、後宮の肥大化、頽廃化に伴って進歩した。蕊は女性器の象徴であり、詞の中にこの化粧が登場するのは、妃嬪の天子に認められることを思っての化粧法である。温庭筠漢皇迎春詞(溫庭筠 唐詩)
春草芊芊晴掃煙,宮城大錦紅殷鮮。
海日初融照仙掌,淮王小隊纓鈴響。
獵獵東風焰赤旗,畫神金甲蔥龍網。
公步輦迎句芒,複道掃塵燕彗長。
豹尾竿前趙飛燕,柳風吹盡眉間黄。
碧草含情杏花喜,上林鶯囀游絲起。
寶馬搖環萬騎歸,恩光暗入簾櫳里。
とあり、宋 王安石《與微之同賦梅花得香字》之一「漢宮嬌額半塗黃,粉色凌寒透薄裝。」とある。額に花葵などの化粧をするので蕊黄という。また、温庭筠の帰国遙詞に「粉心黄蕊花靨、眉黛山両点」とある。高昌の壁画などでその実例が見られる。
唐代の女性は、化粧にたいへん気をつかった。普通は、顔、肘、手、唇などに白粉や頬紅をつけ、また肌を白くし、あるいは艶やかにしたが、それ以外に眉を画くことをことのほか重視した。眉毛の画き方はたいへん多く、玄宗は画工に「十眉図」を描かせたことがあり、それらには横雲とか斜月などという美しい名称がつけられていた(『粧楼記』)。ある人は、唐代の女性は眉毛の装飾に凝り、それはいまだかつてなかった水準に達したと述べている。その他、彼女たちは額の上に黄色の粉を塗り、それを「額黄」といった。また、金箔や色紙を花模様に切り抜いて両眉の間に貼るのが流行り、「花細」、「花子」などと呼ばれた。その他、両頬に赤、黄の斑点、あるいは月や銭の図柄を貼るケースもあり、これは「粧靨」靨はえくぼの意)といった。

温庭筠『偶遊詩』
曲巷斜臨一水間,小門終日不開關。
紅珠斗帳櫻桃熟,金尾屏風孔雀閑。
雲髻幾迷芳草蝶,額黃無限夕陽山。
與君便是鴛鴦侶,休嚮人間覓往還。
とあるのはちようどこの句と同様の例で、無限というのは山に見たてた額の景色に無限の情がある意であろう。山額は額の形を山に見たてて言った言葉。わが国で見る富士額というごとし。当はちょうど額の正面のところに蕊黄が施されている意。
42.
 當山額。横になった妃嬪の特徴を出す蕊黄を額に施したお化粧。山は女体。又、眉の書き方をあらわす場合もある。
43.
 宿粧 寝化粧。顔だけでなく体に対して、服装も薄絹で艶めかしくすること。

44. 紗窗 薄絹を張った窓。窓は、ここでは、期待をして足音を聞くことをあらわす。

45. 相見 天子が妃嬪を見出すこと。妃嬪が特徴ある蕊黄をしてお目に留まったということ。身分が確定すること。

46. 牡丹 春三月の花。牡丹は女性性器をいい、春三月に女性となったという意味である。牡丹が後宮の庭に咲き、妃嬪が女性として咲いたということ。

47. 翠金作股 翠釵は翠の羽で飾ったかんざし。翠はかわせみ(翡翠)、またはみどりの色の羽をいう。○股 金細工のカンザシの二股の脚。高価なもので、妃嬪の二品の身分になったこと

48. 蝶雙舞 釵の上に雌雄の蝶が舞うような形をしてついていること。嬰蝶というのは女の独居の寂寥に対していう。一に蝶雙舞に作る。老翠の飾りのついた管、あるいはカワセミの羽を飾った轡。

49. 心事 心中のこと。ここでは妃嬪の夢であった品位となったものの、愁いと恨みに思う胸の内をいう。

50.  菩薩蠻十四首其四【解説】・送別の宴会など、事あるごとに「官妓」が花を添えた。官妓らは、そこで出会った官僚から、まず、懇意になり、特別な存在と認められ、やがて①身請け、②買斷、ということを夢見ていた。①は妻妾となってすまいを与えられる、②はすまいが与えられる場合もあったが多くの場合、楼閣の一部、小楼、あるいは閨房をあたえられ、他のお客と接待する事は無かった。

この詩は、こうした夢を実現した官妓であったものが、遠く辺墓の守りに出掛けた男からの便りもなく孤独に春を送る女の悲しみを詠うというものである。

冒頭二句、番の溌鵜(オシドリ)を詠むことで女の孤独を際立たせる。眼前に広がる曲江の芙蓉池の春景色は、かって逢瀬を重ねて眺めた景色であり、それだけに今の侘しさを一層強く感じさせる。続く二句、雨に洗われた海棠の鮮やかな紅の色を描写している。海棠は女の唇、若く麗しい海棠花の様な自分がやがて散ってしまう、行く春と自分を重ねる。

後段の一、二句も現実の景であると同時に、かつて男を前にした時の様子でもある。刺繍の上着の袖でえくぼを隠したのは男に対するお誘いのしぐさである。唐の時代から、頬に着けえくぼをして、決まった男がいることを表したもので、寝牀へのお誘いのポーズであった。それが余計に寂しさを表す語となっている。・温庭:晩唐の大詞人。詩人でもある。花間集では彼の作品が一番多く、六十六首も採用されており、このことから花間鼻祖とも称されている。

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

翠翹金縷雙鸂,水紋細起春池
池上海棠
,雨晴紅滿
繡衫遮笑
,煙草粘飛
青瑣對芳
,玉關音信

  
  
  
  

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翠翹金縷雙鸂鵣,水紋細起春池碧。
みどりの羽に金糸をまとった美しいつがいのおしどりが、池のうえに睦まじく戯れている。水紋がこまかくたちおこる春の池は深くみどり水を湛えている。
51. 翠翹金縷雙鸂鵣 翠翹はみどり色の羽。金縷は金糸。鸂鵣はおしどりの一種。翠翹金縷はおしどりの長い羽の美麗なことをいう。雙はおしどりがその習性として常に雌雄並んでいるのをいい、閨中の妓女が独居する寂蓼に対していう。この国出る品物は高級官僚の妻妾になった元官妓であろうと思われる。


池上海棠梨,雨晴紅滿枝。
池のほとりには海棠の花がさき、雨あがりに紅の花が枝いっぱいにさきみちて、春のこころをただよわせている。
52. 海棠梨 海棠のこと。海は外国から渡来した植物の意。1バラ科の落葉小高木。枝は紫色で垂れ下がり、葉は楕円形。4月ごろ、紅色の花が下向きに咲き、実は丸く、黄褐色に熟す。中国の原産で、庭木などにする。垂枝(すいし)海棠。花(はな)海棠。
薛濤『海棠渓』
春教風景駐仙霞、水面魚身総帯花。
人世不思霊卉異、競将紅纈染軽沙。

  薛濤(せつとう)の詩
53.
 紅 花の意。詞では花のことを多く紅という。


繡衫遮笑,煙草粘飛蝶。
刺繍をした衫の袖でわかれたままの愁いに沈んでえくぼをおおいかくす。ぼんやりとした春かすみのなか春草にふれたり離れたり蝶がたわむれ飛ぶのである。
54. 繍衫 刺繍をほどこした衫。衫はひとえの短い服。
55.
 遮笑
 えくぼをおおいかくす。刺繍の上着の袖でえくぼを隠したのは男に対してする閨牀へのお誘いのしぐさである。
56.
 煙草 
春靄に煙る草。(行楽での逢瀬を連想させる語)

57. 粘飛蝶 煙草は春霞の中につつまれた草。粘は粘着ねばりつく。草に蝶がくっついたり飛んだりしているさまをいう。男女の愛し合うさまを想像させる句である。蝶が草花から離れることなく次から次へと渡り飛ぶこと。


青瑣對芳菲,玉關音信稀。
青漆で塗った東の門のほとりにはかぐわしい春の草が花をさかせるころとなったが、とおい西域の国境のかなた玉門関へいった人からの便りもまれにしかやってこない。
58. 繍衫 刺繍をほどこした衫。衫はひとえの短い服。
59.
 遮笑
 えくはをおおいかくす。憂愁をあらわすようす。
60.
 青瑣 門の扉に瑣形の模様を彫刻して青漆で塗った東の門。ひいては宮門をいうがここは貴族の家の門の意。遊郭とか娼屋の門は西門を云うので歓楽街ではない。
61.
 芳非 
咲き香る花。よいにおいのする草花。

62. 玉関 玉門関。今の甘粛省教燈の西北にあった関門。ここでは辺塞の意。
李白 子夜呉歌 秋
長安一片月、万戸涛衣声。
秋風吹不尽、総是玉関情。

李白22 子夜呉歌 春と夏

李白24 子夜呉歌其三 秋 と25 冬

63.  菩薩蠻十四首 其五 唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

杏花含露團香雪,綠楊陌上多離別。
燈在月朧明,覺來聞曉鶯。
玉鈎褰翠幕,妝淺舊眉薄。
春夢正關情,鏡中蟬
輕。

●○○●○○●  ●○●●○△●

○●●○○  ●△△●○

●?○●●  ○△●○●

○△△○○  ●△○?△

紅梅002

64. 杏花 曲江の杏花苑。

河傳三首其三

同伴,相喚。

杏花稀,夢裡每愁依違。

仙客一去鷰已飛,不歸,淚痕空滿衣。

天際雲鳥引晴遠,春已晚,煙靄渡南苑。

雪梅香,柳帶長,小娘,轉令人意傷。

(河傳三首其の三)

同伴し,相い喚ぶ。

杏花稀れにして,夢裡 每に依違を愁う。

仙客 一去って 鷰已に飛び,歸らず,淚痕 空しく衣滿つ。

天際 雲鳥 晴遠を引く,春已に晚れ,煙靄 南苑に渡る。

雪梅 香り,柳帶 長く,小娘,轉た人をして意傷きわ令む。

65. 団香雪 杏の花が白い雪のかたまりのようになってさいているさま。温庭筠の春江花月夜詞に「千里洒空照水魂、万枝破鼻団香雪」とある。杏花には、薄紅色と白色のものである。宮殿の庭には李花、牡丹の紅色が際立った。
66.
 栢上 道のほとり。栢:大通り。上:ほとり。

67. 曲江の杏花苑 Ⅱ中唐晩唐\白居易\白居易《酬哥舒大見贈》
68.
月朧 朧にかすんだ春の月のことで季節は春分の時期をいう。

69. 玉鈎褰翠幕 玉鈎は簾幕をひっかける玉製のかぎ。つりて。褰はかかげる。
70.
 粧浅 お化粧が浅く、さきにまゆずみでかいた眉もうすれている。憂愁の容貌をいう。

71. 蟬 蝉の羽のようなうすくてうつくしい鬢。魏文帝の宮人莫瓊樹がはじめて作りだしたといわれる。ここでは憂愁で憔悴した女のすがたとして、鬢髪も軽くうすくなったという意を含んでいる。

72.  菩薩蠻十四首 其六【解説】唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

寶函雀金鸂  沈香閣上
楊柳又如  驛橋春雨
畫樓音信  芳草江南
鸞鏡與花  此情誰得

  
  
  
  

73. 寶函 宝函はうつくしい匣の意であるが、枕函(まくら)とか、化粧箱をさす。

74. 鈿雀 鈿雀は花鈿(かんざし)雀釵のたぐいであろう。

75. 金鸂鵣 金鸂鵣、これも金のおしどりのかんざしである。たからのほう枕のほとりに叙のおちているけしき。夫が居たら考えられない景色というところであろう。
76.
 沈香閣 全唐詩により閣に改める。ここは美しい楼閣としておそらく陳後主の故事を借りているのであろう。・沈香:〔じんこう〕熱帯や広東省に産する香木の名で、水に沈むからこう呼ばれる。香の名。

77. 山碧 呉山は浙江省杭県にある山名。古来名勝の地として知られる。山上に伍子胥廟があるので青山とも呼ばれる。ここは呉の山々という意かもしれない。
李白『楊叛兒』
君歌楊叛兒、妾勸新豐酒。
何許最關人、烏啼白門柳。
烏啼隱楊花、君醉留妾家。
博山爐中沈香火、雙煙一氣凌紫霞。

漢詩ブログについて、と李白36 楊叛兒と蘇東坡-蘇軾 ⑪江城子 密州出猟
78.
 楊柳 楊柳はしなやかな女性を示す。大業元年(605年)煬帝は西苑から穀洛二水を引いて黄河へ。板渚から熒沢を経て汴水へ。また汴水を泗に入れ准河に到る運河。及び刊溝を開き山陽から揚子江に入る、大運河工事を起し、その堤に街道を作り、楊柳を一千三百里にわたって植えた。その柳を指す(「隋沓」本紀及び食貨志)。旅立ち別れる男に楊柳を折って健康と無事を祈るのである。

79. 鸞鏡 鸞鳥を背に彫んだ鏡。ケイ賓(カシミ-ル地方にあった国の名)の王が鷲を飼っていたが三年たっても鳴かなかった。夫人が「鸞はその姿を見たらなく」というので鏡をかけてこれをうつさせたら夜中に鳴き出して死絶したという。よって後世鏡のことを鸞鏡というという。
李商隠『無題』
含情春晼晩、暫見夜蘭干。
樓響將登怯、簾烘欲過難。
多羞釵上燕、眞愧鏡中鸞。
歸去横塘暁、華星送寶鞍。
80.
 鏡中鸞 金属製の鏡の背面に彫られた鸞の模様が「双鳳文鏡」であり、離ればなれのつがいの鸞がお互いを求め合う姿を彫刻しているものが多い。「鸞鏡」は、愛し合う(時にはなれねばならない)男女の思いを映し出す鏡をしめす。鸞は理想郷に棲む想像上の鳥。羽の色は赤色に五色を交え声は五音に合うという。白楽天「太行路」に鏡中鸞を引き合いにし男女について詠っている。

無題 (含情春晼晩) 李商隠 16

81. 花枝 花のような顔、顔付きを言う。白居易の「長恨歌」に、揚貴妃の悲しみにくれ涙に満ちた風情を形容して「玉容寂寞涙闌干、梨花一枝春帶雨。」(玉容 寂某として 涙 欄干たり、梨花の一枝 春 雨を帯ぶ) 玉のような美しい顔は寂しげで、涙がぽろぽろとこぼれる。梨の花が一枝、雨に濡れたような風情である。」 と言う。

82.  菩薩蠻十四首 其七【解説】この詩も、官妓が身請けされて別宅に住まいしていて、どこかに赴任することで別離した。きっと帰っているけれど自分の元には帰ってくれないということをおたっている。

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

玉樓明月長相  柳絲裊娜春無
門外草萋  送君聞馬
畫羅金翡  香燭銷成
花落子規  綠窗殘夢

  
  
  
  

83. 玉樓 宝玉にかざられた立派な建物。春の装いにかがやく高楼は女妓のいる建物を指す。
84.
 明月 明るい月。名月。仲秋の明月。美しい女。
85.
 長  とこしえに。いつまでも。
86.
 相憶 昔のことを思い起こす。憶は、あれこれと思いをはせること。
87.
 柳絲 垂れ下がった柳の枝のこと。絲柳。女性の体の線のことを謂う。
88.
 裊娜 しなやかなさま。なよなよとしているさま。は、嫋(たおやか、しなやか)に通ずる。
89.
 春無力 楽しいはずの春が来てもなにごとにも無気力の様子であること。春行楽で新しい出会いと結ばれるときに、男と別れたまま振り向いても暮れなくなって、さびしくうらぶれて無気力になっているということ。同時に女妓に歳を重ねて春に対する期待感がなくなっていることを云う。

90. 【解説】この二句は、仲秋の名月を見ては男への思いを高め、又春が来て柳の揺れるのを見て逢瀬の思いをはせるが叶わぬものとあきらめ何事にも無気力になる。

91. 萋萋 草が茂っているさま。
92.
 送君 恋人を送る。君とは男性を指す。
93.
 聞馬嘶 馬のいななくのが 聞こえてきた。男と最後の別れの情景。

94. 【解説】この二句は、又春が来て草は萌え、春には逢瀬を約束していたことを万物が成長することで思い出す。

95. 畫羅 美しいうすぎぬのこと。畫は、動詞として、(絵を)えがく。形容詞として(建物などに色が塗られていたり、模様が画かれていたりして)美しい、(「畫船聽雨眠」の畫)になる。
96.
 金翡翠 かわせみ。雌雄対になったカワセミのことで、翡は雄で翠は雌を謂う。
97.
 香燭 香しき蝋燭。香はこの蝋燭がいい香りを放つかどうかということよりも、女性を暗示していることの方が大きい。
98.
 消成涙 。蝋が溶けて涙を流したみたいになっていること。消を銷とする本が多い。銷の方が通りやすい。

99. 【解説】この二句は、高級官僚からの贈り物が飾られた閨をあがく、その品を見るたびに涙が出る。しかしそれらのしなはかたずけることなどできないものなのだ。

100. 花落 花が 散る。若い時の花は散る。
101.
 子規 ホトトギス杜鵑。血を吐きながら、悲しげに、鳴くことから鳴き声が読み方と類似しているため不如歸とも書き表す。

宣城見杜鵑花 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集-244/-350

102. 綠窗 緑のうすぎぬの窓。女性の部屋の窓のこと。
103.
 殘夢 見果てぬ夢。見残した夢。男と過ごした日々の思いでを指している。
104.
 迷 悩乱している。

105. 【解説】この二句は、春を過ぎ初夏になる、女の若さも同じように散ってゆく、だからどこに行っているかわからないが何とか存在感を出して気付いてもらいたいということを表現している。同じような表現をしている詩を以下のように紹介する。

法鏡寺 杜甫
洩雲蒙清晨,初日翳複吐。
朱甍半光炯,戸牖粲可數。
拄策忘前期,出蘿已亭午。
冥冥子規叫,微徑不複取。

“同谷紀行(6)” 法鏡寺 杜甫 <325>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1541 杜甫詩 700- 478

杜甫の鳥獸蟲魚類について整理してみると次のようにある。
五言律詩  
『鸚鵡』、『子規』、『百舌』、『歸鴈二首』、『歸鴈』、『孤鴈』、『鸂鶒』、『花鴨』『麂』、     

錦瑟 
錦瑟無端五十弦、一弦一柱思華年。
莊生曉夢迷蝴蝶、望帝春心托杜鵑。
滄海月明珠有涙、藍田日暖玉生煙。
此情可待成追憶、只是當時已惘然。

錦瑟 李商隠 1 Ⅰ晩唐李商隠詩<1>漢文委員会kanbuniinkai紀頌之漢詩ブログ<64>

 (井泥四十韻 第四場面 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 144

井泥四十韻 第4場面
伊尹佐興王,不藉漢父資。
磻溪老釣叟,坐爲周之師。」
屠狗與販繒,突起定傾危。
長沙
封土,豈是出程。」
帝問主人翁,有自賣珠兒。
武昌昔男子,老苦爲人妻。」
蜀王有遺魄,今在林中啼。
淮南雞舐藥,翻向雲中飛。』
○蜀王 蜀の開国伝説によると、周の末に蜀王の杜宇が帝位に即き、望帝と称した。望帝は部下のものに治水を命じておきながら、その妻と姦通し、その後その罪を恥じて隠遁した。旧暦二月、望帝が世を去ったとき、杜鵑(ホトトギス)が、哀鳴した。これを蜀王魂という。また、春心托杜鵑 相手と結ばれたいとを思う心は、血を吐きながら悲しげに鳴く杜鵑(ホトトギス)に托す。杜鵑:〔とけん〕ほととぎす。血を吐きながら悲しげに鳴くという。
燕臺詩四首 其二 夏#1 李商隠130 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 130-#1 
李商隠1錦瑟
韓愈 杏花
居鄰北郭古寺空,杏花兩株能白紅。
曲江滿園不可到,看此寧避雨與風
二年流竄出嶺外,所見草木多異同。』

杏花 #1 Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ989 韓愈特集-37-#1

 

冬寒不嚴地恆泄,陽氣發亂無全功。
浮花浪蘂鎮長有,纔開還落瘴霧中。
山榴躑躅少意思,照耀黃紫徒為叢。』

 

杏花 #2 Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ992中唐305 韓愈特集-37-#

鷓鴣鈎輈猿叫歇,杳杳深谷攢青楓。
豈如此樹一來翫,若在京國情何窮。
今旦胡為忽惆悵,萬片飄泊隨西東。
明年更發應更好,道人莫忘鄰家翁。』

杏花 #3 Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ995中唐306 韓愈特集-37-#3

○山榴 「さつき(皐月)」の古名。山奥の岩肌などに自生する。盆栽などで親しまれている。サツキツツジ(皐月躑躅)などとも呼ばれており、他のツツジに比べ一ヶ月程度遅い、旧暦の五月(皐月)の頃に一斉に咲き揃うところからその名が付いたと言われる。○躑躅 ツツジ。おおむね常緑若しくは落葉性の低木から高木で、葉は常緑または落葉性で互生、果実は蒴花である。4月から5月の春先にかけて漏斗型の特徴的な形の花(先端が五裂している)を数個、枝先につける。杜鵑花(とけんか)、杜鵑はほととぎすの別名。
花間集02105.  菩薩蠻十四首 其八【解説】

 悲しい妃嬪を詠う。

前段の第一句は妃嬪の衣裳の華麗さを言うと同時に、金糸の番の鳳凰を通じて妃嬪の孤独を際立たせる。

第二句は一夜のこぬか雨に濡れそぼつ牡丹の花に、涙にうちしおれた妃嬪の姿を重ねる。雨に濡れた花は、重みで俯きになっており、それは愁いに沈んでうなだれる女の姿そのものでもある。

前段第四句、頬がほっそりしているのは、寵愛を失った故のやつれの表れである。

後段は、妃嬪は、後宮の一角か、離宮に遣られて、皇帝か没するまでただ、生かされるだけである。高殿に登り、天子の方を望んで時の経つのにも気づかぬさまを詠い、身を寄せる高殿の手すりから見えるものは、逢瀬のひと時を想像させる枝垂れ柳の揺れであることを言う。

末一句は、燕は早くも春の社祭り頃に帰って来たツバメを見て、春が過ぎてゆくのを思い、この生活をしかたなく受け入れていくことを思うのである。

 

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

鳳凰相對盤金,牡丹一夜經微
明鏡照新
輕雙臉
畫樓相望
,欄外垂絲
音信不歸
,社前雙燕

  
  
  
  

106. 鳳皇 鳳凰。鳳は雄、凰は雌。男女の和合円満を象徴する。この鳳凰は盤「菩薩蛮」の「金鷓鴣」と同様、衣裳に刺繍された模様を指す。なお、髪飾りと解する説もある。金鷓鴣:鳥の名。しゃこ。キジ科の鳥。ここでは、鷓鴣で、男女一緒になることを示しており、詞全体では、「鳳凰相對盤金縷」でも示されるように、そのことが、叶わなくて、一人でいる女性の艶めいた寂しさを詠っている。

107.  蛇がとぐろを巻くように円形にぴたっと貼り付くこと。

108. 双腺 両の頼。

109. 雙臉長 右左の頬がやせたこと。寂しさに心痛めてやつれた様子を云う。晏殊の訴衷情詞に「露蓮雙臉遠山眉」とある。

110. 画楼 美しく塗り飾った高殿。

111. 音信小帰来 便りが来ない、音沙汰がない。

112. 社 地神を祭った社の祭り。立春後の五番目の戊の日に行われる豊作祈願祭(春社)と上汁秋後の五番目の戌の日に行われる収穫感謝祭(秋社)がある。中国には、燕が春社の頃に帰って来て秋社の頃に去って行くところから、社燕という言葉がある。

113. 社前雙燕回 この詩全体艶閨の雰囲気を持った語でちりばめられており、しかし、少し年を取ってきた富貴の家に囲われた妓女にとってただ寂しさだけがのころ。ここに言う燕は、この時期、子作りをするため雌雄が一緒にいる晩春のころのことである。

韓愈 琴操十首 (9)別鵠操 商陵穆子,娶妻五年無子。父母欲其改娶,其妻聞之,中夜悲嘯,穆子感之而作 韓退之(韓愈)詩<75-(9)>Ⅱ中唐詩439 (12/08)

”成都紀行(5)”  飛仙閣 杜甫詩1000 <344>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1647 杜甫1500- 511

 

月蝕詩效玉川子作 韓愈 韓退之(韓愈)詩<96-#7>Ⅱ中唐詩520 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1646

114.  菩薩蠻十四首 其九【解説】 過ぎゆく春に、寵愛を失った妃嬪の情を詠う。

前段に言う楊は雄を示し揺れる枝は逢瀬をれんそうさせる、季節が変わり、秋の夜長を一人過ごす。作中の妃嬪は庭を眺めて思いに耽っていたが、せめて夢で寵愛を受けるだけだ。しかし、彼の人のことがやはり胸から離れず、なかなか寝付けない。これが前段の意である。

時間の流れからすれば、すぐ近くにいても、寵愛は簡単ではない。「灯、半ば明らかなり」とは、外の月光の明るさと対比した表現は、後宮のおなかの寂しさをあらわしたものである。

後段は、妃嬪は翡翠や黄金の飾りを装ってみたものの、すべて贈り物でいただいたものであるから、独りの世界に閉じ籠もってそれをたえなければいけない。

この詩の表現で、「背窗燈半明」というのは新しい感じがする句である。又、楊柳の内、「楊」:男の語と「月」:女を同じ句の中にあるのは、逢瀬を思い出させるものであり、楊、イクォール別離⇒折楊柳⇒国境の守りに着く⇒遠くの空を見る、と解釈するのは単純すぎる、確かに、一方的に別れておったということは、折楊柳とは無関係である。この詩の面白いのは、近くにいても、思いが届かず、寵愛を失っている状況を詠っていることにある。

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

牡丹花謝,綠楊滿院中庭
相憶夢難
,背窗燈半
翠鈿金壓
,寂寞香閨
人遠淚闌
,燕飛春又

  
  
  
  

115.  花がしぼみおちること。
116.
  止むこと。
117.
 中庭 中心にある庭、なかにわ。

118. 背窓句 宮殿のどこか、窓の向こうに毎日思いを向けている、すぐ手の届くところにいるのに。その思いは一向に届かないこと。

119. 涙闌幹 闌幹は涙の流れるさまであるが、ここでは毎日泣き続けている状況を示しているので、涙か流し枯れてもそのあとは残っているといったほうが理解しやすいとおもう。

120.  菩薩蠻十四首 其十【解説】 梨の花の咲く春に寵愛をうけ、避暑に行かれるのを見送ったきり、また、春が来ても、初夏を迎えてもお渡りになる事は無かった妃嬪の情を詠う。

前段は、この素晴らしい春の夜を独り過ごさねはならぬ恨みを語り、金の雁の刺繍も我が流す涙で濡れている。

後段第二句で、妃嬪の宮殿が、越の美女西施が紗を洗ったという川の入江にあると言っているのは、この妃嬪が西施のような美女であることを表現する。そして、今年もまた燕は帰って来たのに愛するお方は妃嬪の元には帰って来ない。別離の情・子作りを詠う詞に燕がよく描かれること、本作にも当てはまる。

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

滿宮明月梨花  故人萬裏關山
金雁一雙  淚痕沾繡
小園芳草  家住越溪
楊柳色依  燕歸君不

  
  
  
  

121. 滿宮明月梨花白 宮は王者の官室をいう。この場合妃嬪の詩である。この句は、妃嬪が寵愛を受けていたことを表現するものである。百名を超える妃賓の中には、全く寵愛を受けずに過ごす者もいた。寵愛を受ける間に子供ができることが、妃嬪のその後の人生を帰るのである。王宮に限らず、単に満楼というのと変わらないという説もあるが、この語はそんなアバウトな感じでは使えない語である。温庭筠の舞衣曲「不逐秦王巻象株、満楼明月梨花白」。とは異なる。
122.
 關山 辺境の塞・関所をいう。杜甫『洗兵行(洗兵馬)』「三年笛裡關山月,萬國兵前草木風。」
洗兵行 #1 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ992 杜甫特集700- 295杜甫『登岳陽樓』「昔聞洞庭水,今上岳陽樓。呉楚東南坼,乾坤日夜浮。親朋無一字,老病有孤舟。戎馬關山北,憑軒涕泗流。」、李白31 『関山月』「明月出天山、蒼茫雲海間。長風幾萬里、吹度玉門關。漢下白登道、胡窺青海灣。由來征戰地、不見有人還。戍客望邊色、思歸多苦顏。高樓當此夜、歎息未應閑。」高適『塞上聞吹笛』「借問梅花何處落,風吹一夜滿關山。」とある。関所となるべき要害の山。また、ふるさとの四方をとりまく山。故郷。などの意味がある。高適の詩(2) 塞上聞吹笛  田家春望 (1)除夜作
123
金雁 金星が流れて秋が来て雁が帰る季節になったという意。秋は五行で金に配せられる。雁は書信を伝える。天子は、季節により、避暑地に向い、離宮に、あるいは温泉宮にいくので、燕、雁、浮雲、等に喩えて詠われたのである。あくまで、酒の席での詩である。
124.
 涙痕 なみだのながれたあと。単になみだをいうときもある。

125. 越溪曲 越溪は若耶渓。若耶渓は会稽の南から北流して鏡湖に流れ入る。浙江省紹興県南にあり、昔、西施が素足を洗ったところ。ここは美女を西施に比喩していう。李白越女詞五首越女詞 五首 其四淥水曲  李白 1110  採蓮曲(この採連曲のブログで西施について解説している。)。この地方は美人の多い子で有名。素足の女は、楚の国の王を籠絡した女性西施が其ふっくらとした艶的の魅力により語の句に警告させその出発殿のすあしのおんなであったことから、そのエピソードを歌にされたもの。家住は晏幾道の清平楽詞など、詩詞によく見られることば。
晏幾道(清平樂)蓮開欲遍。
一夜秋聲轉。殘綠斷紅香片片。長是西風堪怨。莫愁家住溪邊。采蓮心事年年。誰管水流花謝,月明昨夜蘭船。

126. 楊柳句 男楊と女柳の枝がなよなよと揺れること。詩経采薇に「楊柳依依」とある。依依は柳の枝のしなやかなさまをいう。

127.  菩薩蠻十四首 其十一【解説】 去年の清明節には咲く春とともに寵愛をうけたのに、飛び積もった柳絮の上に雨が降り、杏の花もあめにぬれ落ちてゆく、妃嬪はこれからずっと一人で生きてゆく妃嬪の情を詠う。

 

清明の時節、独り無聊をかこつ妃嬪。

前段は、雨音に聞き入っているうちにいつしか眠りに入り、目覚めてみると既に雨は上がり日は西に傾き、雨に杏の花が散り落ちて、春のたけてゆくさまを述べる。傾く日や散り落ちる花には、彼女の愁いが託されている。

後段に述べる広げたままの屏風も迫る夕闇も、主人公の閉ざされた暗い心情を反映している。また、無聊なままに門口に身を寄せて佇むのは、待っても無駄とは分かっていても、ひょっとしたら愛するお方が訪ねて来てくれるのではないかという儚い期待からのもので、女の微細な心情が見事に描写されている。百数十名いる妃嬪は、一度寵愛を失えば二度とはない。

 

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

南園滿地堆輕,愁聞一霎清明
雨後卻斜,杏花零落
無言勻睡
,枕上屏山
時節欲黃
,無聊獨倚

  
  
  
  

128. 南園 特定の庭園をさすのではないであろうが長安の南の曲江であるか、妃嬪の住まいする南側の庭ということになる宮殿邸宅の正門のある方向である。。
・絮 柳絮。(1)白い綿毛をもった柳の種子。また、それが雪のように散るさま。[季]春。 (2)雪の形容。
129.
 一霎 しばらくの時間。
130.
 清明 二十四節気の一。冬至ののち百五日、春分から十五日目。陽暦の四月五、六日ごろ。

131. 雨後卻斜陽 妃嬪の人生を示す。
132.
 零落 ここは杏花の散ってゆくさま。何年か前のこの季節から女のところへ来なくなったもの。

133. 屏山 妓女の横向きの寝姿をいう。作者はこの二句にエロチックなことを連想させることを意図している。

134. 時節欲黃昏 時節の変わり、妓女の年齢の変化、若さ、新鮮さのなくなってきていることを表現する。

135. 無聊【ぶりょう】 退屈なこと。心が楽しまないこと。気が晴れないこと。また、そのさま。むりょう。

136.  菩薩蠻十四首 其十二【解説】 後宮の宮殿から、離宮、陵廟、あるいは、洛陽の上陽宮のように妃嬪の姥捨て山のようなところに遣られた様子をいう

前段は、麗しき館で意中の人と睦まじく過ごした時のことを回想する。合歓の花はその名のとおり、愛する者同⊥の歓びを想起し、女がかつての良きHを夢見たのも、この花に因る。また、愁いを忘れさせる萱草が茂るとは、当時、女が幸せの最中にあったことを示す。後段は、夢から覚めた後の憂愁を詠う。垂れ下がったカーテンは女の塞いだ心を象徴し、橋下を流れる用水は、過ぎ去った良き時はもう二度と帰って来ないことを語り、同時に、今も春は刻々と過ぎ去ってゆくことを表している。

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

菩薩蠻十四首 其十二
雨晴夜台玲
,萬枝香紅絲
閑夢憶金,滿庭萱草
繡簾垂
,眉黛遠山
春水渡溪,憑欄魂欲

  
  
  
  

 

雨晴夜台玲日,萬枝香紅絲拂。
寵愛を受けた次の日の朝のように、雨が晴れあがり、潤った合歓の花にうららかな日の光がさしこむ。庭中の枝という枝にいっぱいにさいている紅い糸の匂い袋のようなうつくしい花が、ゆらゆらとゆれうごくあの夜の状況を思い出す。
137. 夜合 一名合歓木、ねむのき。夜中になると葉が合するので夜合といわれる。明刊草本花詩譜で夜合花というのはこれとは別種のもの。ここは次の句に紅糸払とあるから合歓の気の花をいう。この二句は天子の夜のお渡りの様子、男女の絡みの表現をいう。
138.
 玲耗日 雨にねれたねむの花が日に映えてくっきりとうつくしく見えること。
139.
 万枝句 庭中の枝という枝に紅いふさのような花がさいてうつくしくしなやかに見えること。紅糸私は紅い色の糸払。糸私は払子のことであるが、ここはねむの花のふさのような形を形容して用いる。

140. 金堂 うつくしい座敷。
141.
 萱草一に吾輩という。かんぞう。わすれぐさ。詩経、衛風伯兮篇に「焉諼得草、言樹之背。願言伯思、使我心痗。」(焉くんぞ諼草を得ん。言に背に樹えん。願いて言に伯を思い、我が心をして痗ましむ)とある。
“我憂いを忘れるために、何処かで、もの忘れする草をみつけ、それを裏座敷に植えたい。“というもの。 謝惠連『西陵遇風獻康楽』にみえる。
西陵遇風獻康楽 その5 謝惠運 謝霊運(康楽) 詩<54>Ⅱ李白に影響を与えた詩441 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1140
142.
 閑夢二句 雨上がりのねむの花を見て」萱草の庭いっぱいに生えた座敷をおもいだす。閏情の詞と見てよく、男が来てくれない、(捨てられた)のなら忘れてしまうことしかないというもの。

143.  ():符道教のお札(ふだ)](1) 葉が落ちる音叶簌簌响木の葉がさらさらと音をたてる.(2) 涙がはらはら落ちる様子.寵愛を失った妃嬪の多くは道教に身を寄せていくものである。

144. 遠山綠 みどりの山は、晩春の山、遠い山の稜線は女の体であり、一人その体を持て余すことを云う。寵愛を受け、その結果子供が出来ないということで、生きる望みが薄らいでいることをいう。

145. 魂欲消 あの寵愛を受けていたころの良き思いで、その思い出をよりどころにして生きてゆく。白居易の《上陽白髪人》とは若干角度を変えて表現をしている。

春水渡溪橋,憑欄魂欲消の二句は、後宮の宮殿から、離宮、陵廟、あるいは、洛陽の上陽宮のように妃嬪の姥捨て山のようなところに遣られた様子をいう。

 

花間温庭筠
 

 

 

「三千宮女胭脂面,幾個春來無淚痕。」(三千の宮女 胭脂の面、幾箇か春来りて涙の痕無からん)《白居易「後宮詞」》。古来、宮人は女性のなかで最も人間性を踏みにじられた人々であり、宦官とともに君主専制制度の直接の犠牲者であった。一方は生殖器をとられ身体を傷つけられた者、一方は人間性を踏みにじられた者である。宮人は奥深い後宮の中に幽閉されて永遠に肉親と別れ、青春と紅顔は葬り去られ、愛情と人生の楽しみは奪われ、生きている時は孤独の苦しみに、また死んだ後は訪れる人もない寂しさの中に置かれた。それで多くの知識人が、彼女たちの境遇に心を痛め嘆息してやまなかったのである。

彼女たちの痛苦の生活と心情を理解しょうとすれば、白居易の「上陽の白髪の人」ほど真実に迫り、生々と彼女たちの人生を描写したものはない。

 

上陽白髪人  白居易(白氏文集 第三)

上陽人    ,紅顔暗老白髪新。

緑衣監使守宮門,一閉上陽多少春。

玄宗未歳初選人,入時十六今六十。

同時采択百余人,零落年深残此身。

憶昔呑悲別親族,扶入車中不教哭。

昔云入内便承恩,臉似芙蓉胸似玉。

未容君王得身面,已被楊妃遥側目。

妬令潜配上陽宮,一生遂向空房宿。

秋夜長    ,夜長無寐天不明。

耿耿残灯背壁影,蕭蕭暗雨打窓声。

春日遅    ,日遅独坐天難暮。

宮鶯百囀愁猒聞,梁鷰双栖老休妬。

鶯帰鷰去長悄然,春往秋来不記年。

唯向深宮望明月,東西四五百迴円。

今日宮中年最老,大家遥賜尚書号。

小頭鞋履窄衣裳,青黛点眉眉細長。

外人不見見応笑,天宝末年時世粧。

上陽人 苦最多,少亦苦,老亦苦。

少苦老苦両如何。

君不見昔時呂尚美人賦。

又不見今日上陽白髪歌。

 

白居易《上陽白髪人》 (白氏文集 第三)

上陽の人、紅顏暗く老いて白髪新たなり

綠衣の監使宮門を守る、一たび上陽に閉ざされてより多少の春ぞ

玄宗の末 初めて選ばれて入る、入る時十六今六十

同時に採擇す百余人、零落して年深く 此の身を殘す

憶ふ昔 悲しみを吞みて親族に別れ、扶けられて車中に入るも哭せしめず

皆云ふ 入すれば便ち恩を承くと、臉は芙蓉に似て胸は玉に似たり

未だ君王の面を見るを得るを容れざるに、已に楊妃に遙かに側目せらる

妒(ねた)みて潛かに上陽宮に配せられ、一生遂に空房に宿る

秋夜長し、夜長くして寐ぬる無く天明ならず

耿耿たる殘燈 壁に背く影、蕭蕭たる暗雨 窗を打つ聲

春日遲し、日遲くして獨り坐せば天暮れ難し

宮鶯百たび囀ずるも愁へて聞くを厭ふ、梁燕雙び棲むも老いて妒むを休む

鶯は歸り燕は去って長へに悄然たり、春往き秋來して年を記さず

唯だ深宮に明月を望む、東西四五百回 圓かなり

今日 宮中 年最も老ゆ、大家遙かに賜ふ尚書の號

小頭の鞋履 窄(せま)き衣裳、青黛 眉を點ず 眉細くして長し

外人は見ず 見れば應に笑ふべし、天寶の末年 時世の妝ひ

上陽の人、苦しみ最も多し、少くして亦苦しみ、老いて亦苦しむ。

少くして苦しむと老いて苦しむと兩つながら如何。

君見ずや 昔時 呂向の美人の賦。

又見ずや 今日 上陽白髪の歌。

146.  菩薩蠻十四首 其十三【解説】

前段第一句、初秋の孤独感、「庭険冷ややかに」は、日中の暖かさも、夜になって竹を揺らす風に消え、誰も来ない一人寝の寒さを感ずるようになったこと、月の光の描写も、空気の透明感とともに、肌に感じる冷気を際立たせている。このひんやりとした気配は、女の独り寝のわびしさいう。

次句第三句の鳳凰は詞において、番の烏として男女和合の象徴を表し、それが逆に女主人公の孤独を際立たせる。

後段第三句、「春恨正に情に関わる」と先に指摘した「番の鳳凰」の語とともに、寵愛を受けた天子を思う情である。

末句は、気付けば夜明けを告げる時の音が聞こえて来たという意味で、彼女が一夜をまんじりともせずに明かしてしまったことを物語る。

華やかな宮殿から、質素な宮殿(離宮・陵廟)に移されて、しずかに暮らしてゆかねばならぬ妃賓を詠う。

 

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

菩薩蠻十四首 其十三
竹風輕動庭除
,珠簾月上玲瓏
山枕隱濃,綠檀金鳳
兩蛾愁黛
,故國
春恨正關,畫樓殘點

  
  
  
  

147. 庭除 庭の階段のあるところ。風除室のような意味を持つ場所。
148.
 玲瓏影 玲の瓏も同じ意味で、1 玉などが透き通るように美しいさま。また、玉のように輝くさま。2 玉などの触れ合って美しく鳴るさま。また、音声の澄んで響くさま。

149. 山枕 枕のこと。温庭篤の更漏子詞に「山枕蹴、錦余寒」、顧鼻の甘州子詞に山枕上、長是怯農鐘」とある。
150.
 隠 臥=隠と同じ、もたれること。よりかかること。或は向こう向きに寢る。
150.
 濃妝 こってりとあついお化粧をした年増女。宵の口に化粧をするのは濃い化粧で、寝る前には寝化粧に帰る。つまり、今日も来なかったということ。西施の事も意味する語である。
151.
 綠檀 黒檀、紫檀と綠壇は枕をつくる木材をいう。緑壇は緑色の枕檀(まくら)ということで、寝るという意味になる。緑檀は後宮でつかわれるもの。
152.
 金鳳凰 枕にはどこされた紋様で、つがいを描いているので、空しさを引き立てる。

153. 故国呉宮遠 呉宮は西施をかりていう。呉は江蘇一帯をいう。西施;沉魚落雁 西施
水光瀲艷晴方好,山色空濛雨亦奇。 
若把西湖比西子,濃妝淡抹總相宜。

154. 残点声 鍾鼓を鳴らして時を告げる音が、明方近くなって、眠い中ほとんどきこえなくなること。夜通し待っている様子、せつなさをあらわすもの。

洛陽女兒行 王維

 

洛陽女兒對門居,才可容顏十五餘。

良人玉勒乘驄馬,侍女金盤膾鯉魚。

畫閣朱樓盡相望,紅桃綠柳垂簷向。

羅幃送上七香車,寶扇迎歸九華帳。

狂夫富貴在青春,意氣驕奢劇季倫。

自憐碧玉親教舞,不惜珊瑚持與人。

春窗曙滅九微火,九微片片飛花璅。

戲罷曾無理曲時,妝成只是熏香坐。

城中相識盡繁華,日夜經過趙李家。

誰憐越女顏如玉,貧賤江頭自浣沙。

杜甫 麗人行

三月三日天氣新,長安水邊多麗人。

態濃意遠淑且真,肌理細膩骨肉勻。

繍羅衣裳照暮春,蹙金孔雀銀麒麟。

頭上何所有,    翠微盎葉垂鬢唇。

背後何所見,    珠壓腰穩稱身。

就中雲幕椒房親,賜名大國虢與秦。

紫駝之峰出翠釜,水精之盤行素鱗。

犀箸厭飫久未下,鸞刀縷切空紛綸。

黄門飛鞚不動塵,御廚絡繹送八珍。

簫管哀吟感鬼神,賓從雜遝實要津。

後來鞍馬何逡巡,當軒下馬入錦茵。

楊花雪落覆白蘋,靑鳥飛去銜紅巾。

炙手可熱勢絶倫,慎莫近前丞相嗔。

 

 

三月三日  天氣 新たに,長安の水邊  麗人  多し。

態は濃く 意は遠くして淑且かつ真に,肌理きりは 細膩さい にして  骨肉は勻ひとし。

繍羅しう の衣裳は 莫春に 照はゆる,蹙金しゅくきんの孔雀 じゃく  銀の麒麟 りん。

頭上何の有る所ぞ, 翠を盎葉おうようと爲して鬢びん脣しんに 垂たる。

背後何の見る所ぞ,珠は腰衱えうけふを壓して穩やかに身に稱かなふ。』

就中なかんづく 雲幕の椒房せうばうの親しん,名を賜ふ 大國  虢くゎくと秦しんと。

紫駝しだの峰を翠釜すゐ より 出いだし,水精の盤に  素鱗 行くばる。

犀箸さいちょ 厭飫えんよして久しく未だ下さず,鸞刀らんたう 縷切る せつして  空しく紛綸たり。

黄門 鞚くつわを飛ばして塵を動かさず,御廚ぎょちゅう 絡繹らくえきとして 八珍を送る。

簫管 哀吟して 鬼神をも感ぜしめ,賓從ひんじゅう 雜遝ざったふして  要津えうしんに實みつ。』

後れ來たる鞍馬は何ぞ 逡巡んする,軒に當たりて 馬より下りて  錦茵きんいんに入る。

楊花やうくゎ 雪のごとく落ちて  白蘋はくひんを覆ひ,靑鳥 飛び去りて  紅巾こうきんを銜ふくむ。

手を炙あぶらば 熱す可べし  勢は絶倫なり,慎みて 近前する莫れ  丞相じょうしゃう 嗔いからん。』

155.  菩薩蠻十四首 其十四【解説】 百数十名いる妃嬪は、一度寵愛を失えば二度と寵愛を受けることはなく、妃嬪が華やかな宮殿から、質素な宮殿(離宮・陵廟)に移されて、しずかに暮らしている様子を詠う。

冒頭の二句は、妃嬪の閨には豪華な調度品、香の薫かれる室内の景と、その香の薫りにうとうと夢路に誘われるすがたを描く。

続く二句は、離宮から見える外の景色、川辺の煙る青柳が朧になるほどに繁るのは、逢瀬を連想させ、有明けの空には名残月、雁は妃嬪のもとに文の一つもないこと、侘しさを誘う。

後段は、寵愛を受けることは二度とないと覚悟したものの、生きていく術として、妃嬪の存在感、モチベーションを自分自身で一つ一つの恒例の行事を、丹念に行うことで満足する。人形を作ること、顔を整え、豊かな髪に挿された簪の人形が春風にゆらゆらと揺らめくさま、それらすべてが生きがいとなるので、余計なことは考えないことが生きていくことだと詠う。

この後段の描写は、夢から覚めた後の女の姿とも解釈されるが、生きがいを何に求めるかということを述べている。

単に、夢の中の女の姿を描いたともとれるようでは、花間集の意味はわからない。

唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

菩薩蠻十四首 其十四

水精簾裏頗黎,暖香惹夢鴛鴦
江上柳如,雁飛殘月
藕絲秋色,人勝參差
雙鬂隔香,玉
頭上

  
  
  
  

156. 水精簾 水精は水晶。李白の『玉階怨』「玉階生白露、 夜久侵羅襪。却下水晶簾、 玲瓏望秋月。」(白玉の階きざはしに白い露が珠のように結露し、夜は更けて羅(うすぎぬ)の襪(くつした)につめたさが侵みてくる。露に潤った水晶の簾をさっとおろした、透き通った水精の簾を通り抜けてきた秋の澄んだ月光が玉の光り輝くのを眺めているだけ。)李白39玉階怨 満たされぬ思いの詩。
158.
 頗黎枕 頗黎は玻璃/頗梨【はり】1 仏教で、七宝の一。水晶のこと。2 ガラスの異称。3 火山岩中に含まれる非結晶質の物質。
・暖香 それをたくと部屋のあたたかくなるたきもの。香名に暖香というのもあるがここは一般的なことばであろう。
159.
 惹夢 夢をさそうこと。
160.
 鴛鴦錦 鴛駕の紋様のある錦の被(懸けふとん)。

161. 江上 川のほとり。江は中国の川の呼称。北方では河と言う。

162. 柳如 柳絮が飛び交うのはカスミではなく煙のようなじょうたいせある。

163. 殘月 夜明けの空に懸かる月。月後半の月、別れを惜しむ名残月。

164. 藕絲秋色淺 藕絲は蓮根からとれる糸。そのよぅな細くて軽い繊維の衣服をいう。体の線がよく出て、妃嬪が閨に着る。秋色とは悲愁の五行思想の白色、霜色。
165.
 人勝 華勝。正月七日「人勝節」という。正月7日の人日に用いられた飾り。人や動植物の形に切り抜いて彩色したあしぎぬ、金箔の縁飾り等の残片を一枚に貼り込んでいる。人日の日に、厄除けに用いる髪に飾る人形。
166.
 参差は大小ふそろいのさま。
167.
 香紅 花をいう言葉であるが、ここは花のかんざしを意味するとおもう。
168.
 玉釵頭上風 王叙頭は玉のかんざし。男と交わって揺れるのではなく、風に揺れるのである。憐れに感じさせるほどせつない女の状況を詠うのである.


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